← 戻る Grand Mercure Nasu Highlands Resort & Spa

名前のつかない色の葉っぱを、二人で数えていた

名前のつかない色の葉っぱを、二人で数えていた

「計画、全然立ててないし、本当にこれでいいのかな」

「いいと思うよ。なんとなく、それでいい気がするし」

そう言って微笑むあなたの横顔に、少しだけ肩の力が抜けた。私たちはグランドメルキュール那須ハイランドリゾート&スパのロビーに立っていた。外は十一月の冷気が張り詰め、コートの襟を立てても首元に隙間風が入り込む。けれど、自動ドアが開いた瞬間に流れ込んできたのは、柔らかな温もりと、どこか懐かしいアロマの香り。誰かがずっと待っていてくれたような静かな温度に包まれ、私たちはどちらからともなく、小さく笑い合った。

境界線が滲んでいく、静かな時間

案内されたスーペリアツインの部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのは、窓の外に広がる山々の深い色だった。赤や黄色という言葉では足りない、名付けようのない複雑な色彩が重なり合い、冬の訪れを静かに告げている。ベッドから窓まで、ゆっくりと五歩。その短い距離を歩く間に、旅の緊張がほどけていくのが分かった。リネンのひんやりとした感触と、その下に潜り込んだ時に体温がゆっくりと生地に吸い込まれていく心地よさ。もしかしたら、私たちはただ、こうして静かに隣にいたいだけだったのかもしれない。

私たちの関係は、濡れた紙に落とした一滴の墨に似ている気がする。最初から完璧に混ざり合うのではなく、液体がゆっくりと、紙の繊維に沿って広がっていく。急がず、無理に混ぜ合わせようともせず、ただ時間の流れに身を任せて浸透していく。そんな緩やかな変容。鋭かった境界線が、いつの間にか淡い滲みとなって、お互いの領域を優しく侵食し合う。その不確かさが、今の私たちにはちょうどよかった。

屋外の岩風呂に浸かったとき、肌に触れた石のざらつきと、肺の奥まで冷やす冬の空気が、強烈なコントラストを描いていた。熱いお湯に身を沈めると、指先のしびれがゆっくりと溶けていく。隣にいるあなたの呼吸が、白い湯気となって夜空に消えていくのを眺めていた。言葉は必要なかった。ただ、水面に浮かぶ小さな気泡や、遠くで聞こえる風の音だけが、私たちの間を埋めていた。

夕食にいただいた那須芋の料理は、土の香りがかすかに残りながら、驚くほど素朴で深い甘みがあった。舌の上でゆっくりと溶けるその温度が、心の中にある小さな強張りを、ひとつずつ解いていく。グランドメルキュール那須ハイランドリゾート&スパで過ごす時間は、何かを解決するためのものではなく、ただ、今の自分たちのリズムを確認するための時間だった。

夜、部屋の明かりを落とし、窓の外に広がるイルミネーションを眺める。点在する光の粒が、暗闇を完全に消し去ることはないけれど、そこにあるだけで、夜の重さが少しだけ軽くなる。私たちは、まだお互いのことをすべて知っているわけではないし、これからも分からないことがたくさんあるだろう。けれど、この静寂の中に一緒にいられるなら、それで十分な気がした。

冷たい指先を、温かい手のひらで包み込んだとき、世界が少しだけ狭く、そしてとても優しくなった。

  • 暖かい飲み物を片手に、屋上テラスでわざと何も話さない時間を過ごしてみて。
  • 温泉から上がった後、二人で一番心地よいと感じる温度の毛布を分け合って。