← 戻る 礁溪老爺酒店

答えが出るまでの、あの長い空白

答えが出るまでの、あの長い空白

足裏に心地よく沈み込む絨毯の厚みが、外の世界とは違う緩やかなリズムを刻んでいる。礁溪老爺酒店の廊下を歩いていると、子供たちが弾けるように走り出したときの足音が、厚い生地に吸い込まれて、どこか遠い場所の出来事のように聞こえてくる。その音の遅延に、ふと深い安心感を覚えた。

なぜ、喧騒を離れてこの場所を家族で選んだのか

琥珀色の湯気に包まれ、温かいお湯に身を委ねているとき、次男がふと「ねえ、このお湯はどこから来るの?」と聞いてきた。私はすぐに答えを出せず、ただ湯気の向こう側に広がる天井をぼんやりと眺めていた。正解を出すまでの数秒間。その心地よい空白こそが、この旅で一番の贅沢な時間かもしれないと感じた。

家族で旅をすると、どうしても「効率」や「正解」という正論に縛られがちだ。けれど、ここにあるのは、そんな日常の焦りを静かに受け止めてくれる緩衝地帯のような空間だった。広々とした和室の畳のい草の香りが鼻をくすぐり、裸足で歩けば心地よい弾力が伝わる。バスルームのタイルのひんやりとした温度が足裏を刺激し、その直後にふかふかのバスタオルの柔らかさに包み込まれる。その鮮やかな温度差が、張り詰めていた肩の力をゆっくりと解きほぐしていく。

老大がどうしても髪を洗いたくないと泣き出したとき、あるいは次男が浴衣をマントにして廊下を駆け抜けたとき。本来ならため息をついてしまう場面でも、ここでは不思議と「ま、いいか」と思えた。洗練された静寂の中に、家族という名の乱雑さが混ざり合っても、それが風景の一部として溶け込んでいく。完璧な調和よりも、少しだけズレた不協和音の方が、今の私たちには心地よかったのかもしれない。

子供たちの瞳を釘付けにした、小さな発見とは

地下1階にある「岩波庭」に足を踏み入れたとき、子供たちは料理よりも先に、目の前の器に心を奪われた。陶芸家、彭書徹さんが手がけたというその皿には、宜蘭の険しい山並みや幻想的な雲海が、静かな線で描かれていた。次男が小さな指で、皿の上の山稜線をゆっくりとなぞっている。彼にとってそれは単なる器ではなく、指先で触れることができる、掌の上の小さな世界だったのだろう。

主厨の黄欽洲さんが、二日に一度、自ら漁港へ足を運んで選び抜くという鮮魚。その一切れが口の中でほどけるとき、子供たちは「海を食べているみたい!」と歓声を上げた。素材の味がストレートに伝わる料理は、大人の舌だけでなく、子供たちの純粋な好奇心をも満たしていた。

特に印象的だったのは、オープンキッチンの向こう側で、職人の手が正確に、けれど迷いなく動く様子を眺めていた時間だ。包丁がまな板を叩く規則正しいリズム、立ち上る香ばしい香り。子供たちは、まるで魔法のショーを見ているかのように、静かにその動きを追っていた。普段はじっとしていられない彼らが、あんなにも深い集中力を見せるなんて。おそらく、本物の仕事が持つ静かな熱量に、彼らなりに共鳴していたのだろう。

食後、ふと気づくと次男が自分の足の指をじっと見て、「あ、魚がいた!」と大騒ぎしていた。周りの大人が苦笑いするなか、彼だけが自分の指に海の世界を見つけていた。そんな、誰にも理解されない小さな発見こそが、旅の本当の成果なのだと思う。

旅路の果てに、心に深く刻まれた記憶とは

4月の宜蘭は、空の青さが痛いほどに澄み渡っている。礁溪老爺酒店を出て、員山の桐花祭へと向かう道すがら、海からの涼やかな風が頬を撫でた。頭上では、白い桐の花がゆっくりと、まるでスローモーションのように舞い散っている。その白さが、深い青い空に溶け込んでいく様子を眺めていたとき、ふと、家族の誰とも喋っていない静かな時間が流れた。

誰かが何かを言い出し、誰かがそれに反論し、また誰かが笑う。そんな騒がしい日常の繰り返しだけが家族の形だと思っていたけれど、こうして同じ景色を眺めながら、心地よい沈黙を共有できることも、一つの深い繋がりの形なのかもしれない。

チェックアウトの際、スタッフの方が子供たちに優しく声をかけてくれた。その何気ないやり取りの中に、この場所が大切にしている「もてなし」の温度を感じた。高級な設備があるからではなく、そこにいる人々が、私たちの不器用な旅のあり方をまるごと肯定してくれた気がしたからだ。

帰り道、車の中で子供たちが深い眠りに落ちたとき、バックミラー越しに彼らの寝顔を見た。少しだけ日焼けした頬と、心地よさそうに緩んだ口元。彼らの記憶の中に、あの山を描いたお皿や、温かいお湯の感触が、小さな種のように残っていてほしい。正解のない問いかけを、そのままにしておける場所。そんな場所が、私たちの日常のすぐ隣にあることを知った。

窓の外で、白い花びらが一枚、ゆっくりと手のひらに落ちてきた。

  • 4月下旬に訪れるなら、員山の桐花健行ルートを。白い花に囲まれた山道を歩く時間は、子供たちの想像力を刺激してくれます。
  • 岩波庭での食事は、ぜひオープンカウンター席を予約して。主厨の丁寧な手仕事が、子供たちにとって最高の教育になります。

近くのグルメ・スポット

OX炙りステーキ宜蘭員山店

OX 亞克斯炙燒牛排 宜蘭員山店は員山郷員山路一段202号、員山農會のすぐそばにあります。インダストリアル風インテリアにブルースとジャズを流すリラックスムードで、壁には重機用ヘルメットが並びます。ビュッフェとステーキがメインで、ビュッフェのみ109元でサラダ・温菜・焼きパン・アイスが食べ放題。ステーキは309元からでビュッフェ付き。おでん、茶碗蒸し、麻辣鴨血臭豆腐、チョコレートファウンテン、コーンスープなど多彩な料理を取り揃え、サービス料なし。家族や友人との会食に最適です。

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北門緑豆アイス

北門綠豆沙牛乳大王は宜蘭県の老舗ドリンク店で、40年以上の歴史があります。注文を受けてから手作りする緑豆沙牛乳、パパイヤ牛乳、芋沙氷が人気で、濃厚で滑らかな口当たりに行列が絶えません。看板メニューのほか、新しくなった店舗では季節限定ドリンクも登場。宜蘭観光で外せない地元グルメ体験です。

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北門ニンニク肉あんかけ

北門蒜味肉羹は宜蘭県北門エリアの地元小吃で、60年以上の歴史があり、ニンニクの香り豊かな肉羹スープが看板です。豚の肩肉を使った肉羹は滑らかで、ニンニクペースト、筍切り、野菜と組み合わせます。肉羹麺、肉羹粿仔、肉羹米粉、ご飯などがあり、価格は約55元。手頃な銭貨小吃で並ぶことも多く、宜蘭で外せないクラシックな一杯です。

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城隍廟口切り麺店

城隍廟口切仔麺店は宜蘭市城隍街27号にある、地元民おすすめの穴場朝食スポットです。看板なしの質素な外観で、昔ながらの乾麺、スープ麺、粿仔、米粉を提供。手作り魚丸と肝連、豚の肺、嘴邊肉などの小皿が合わせられ、価格も手頃です。営業時間は午前6時〜11時(一部12時まで)で、行列が多いのが特徴。車で来て中山路や城隍廟停留所付近に路上駐車するのがおすすめ。店内はシンプルで夏期は冷房なし、宜蘭の伝統的な朝食を味わいたい旅行者にぴったりです。

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