心に刻まれた、家族の記憶を奏でる五つの音
パシャパシャと、激しく水面を叩く弾けるような音。2月の冷たい空気が頬を刺し、吐く息が白く染まる中で、屋外プールの温かい湯に飛び込んだ次男の歓声が響き渡る。視界を遮る白い湯気のカーテンの向こうで、「見て見て!」と叫びながら全力で泳ごうとする小さな背中。水着を着せるまでの大騒動という名の「チーム作戦」を終えた後のこの音は、親である私たちにとって、何よりの報酬のように心地よく響いた。
カチッという、陶器の器がテーブルに触れる静かな音。「岩波庭」で、作家の手によるざらりとした土の質感を持つ器に盛り付けられた、新鮮な海の幸を囲む。長女が「このお魚、キラキラしてる」と、宝石のような鱗を不思議そうに指差す。洗練された静謐な空間の中で、子供たちがソースをこぼすという小さな事件が起きる。けれど、その不調和さこそが、かえって家族の食卓を彩る心地よいリズムとなって、私たちの心を解きほぐしていった。
ドサッという、大きなベッドにダイブする重い音。礁溪老爺酒店の部屋に入った瞬間、厚いマットレスに体が深く沈み込み、誰が一番深く埋まるかの競争が始まった。足元の柔らかなカーペットが歩く音を優しく飲み込み、洗い立てのリネンの清潔な香りが肌を包み込む。「優雅な時間」を過ごそうと計画していたけれど、この心地よい混乱こそが旅の正体なのだと、深く沈み込みながらふっと笑みがこぼれた。
さらさらと流れるお湯のせせらぎと、深く、長い吐息。子供たちが寝静まった後、貸切温泉で夫婦だけが共有する、湿った空気と濃密な静寂。肌にまとわりつく「美人湯」の滑らかな温度が、一日の疲れをゆっくりと溶かしていく。何も話さなくても、隣にいる人の体温が、湯気越しに鮮明に伝わってくる。視界がぼやけている分、心の中にある相手への信頼だけが、澄み切った水のように透明に感じられた。
タッタッタという、裸足の子供たちが廊下を走り回る軽快なリズム。朝食会場へ向かう道中、スタッフさんが優しく微笑みながら、彼らの不規則なペースに合わせて道を譲ってくれる。完璧なスケジュールなんて、もうなくていい。この予測不能なリズムこそが、家族で旅をしているという確かな実感と、この場所でしか得られない温かな安心感を私たちに与えてくれた。
湯気に霞む窓ガラスと、握りしめた小さな手の温もりだけが、静かに残っていた。
- 「岩波庭」の無菜單料理で、地元の海の幸を家族で囲む贅沢な時間を。
- 2月の冷たい空気の中、礁溪老爺酒店の屋外美人湯に浸かり、空を見上げる至福のひとときを。