鼻先を刺すような冷たい風が吹きつけ、指先がじわりと痺れていた。今回の旅の賭けは「誰が一番先に忘れ物をしたか」だったけれど、結果的に全員が充電器を忘れるという、救いようのない結末を迎えた。チェックインしてロビーに足を踏み入れた瞬間、外の冷気と室内のぬくもりの温度差で、意識がふわっと白濁した気がした。
焼きたてのピザの香ばしい匂いが、冬の湿った空気に溶け込んでいた。とろりと伸びるチーズの様子を誰かが動画に撮っていて、それを眺めながら「効率が悪すぎる」と誰かが呆れたように笑う。熱々の生地を頬張ると、口の中だけが急激に春に塗り替えられたような錯覚に陥った。外は十二月の宜蘭なのに、ここだけは別の時間が流れている。
部屋のドアを開けた瞬間、僕たちは同時に言葉を失った。壁もカーテンも、すべてが深い青に染まっている。「ここ、巨大な水槽の中じゃない?」誰かの呟きが、静かな部屋に波紋のように広がった。青いフィルターを通した光が満ちていて、まるで深い海の底に潜り込んできた気分だ。その不自然なほどの青さが、心地よい静寂として僕たちの疲れを包み込んでくれた。
「充電器がないのは、この部屋の青さに意識を吸い取られたからだ」という、誰にも通じない屁理屈が飛び出した。僕たちは互いの絶望的な忘れ物リストを突き合わせ、誰が一番「旅慣れていないか」を競い合うという、奇妙なゲームを始めた。笑い声が青い壁に反射して、心地よく跳ね返ってくる。
午前六時、バルコニーに出ると、海平線に一本の鋭い金色の線が現れた。それがゆっくりと膨張し、空全体を濃いオレンジ色に塗り替えていく。冬の日の出はどこか切ないけれど、同時に「また明日が来る」ことを静かに突きつけてくる。僕たちは何も話さず、ただその光が網膜に焼き付くのを、冷たい空気の中でじっと待っていた。
烏石港 OA HOTELの部屋にある青い壁に、外からの光が当たると、プリズムのように色が分解されて見えた。壁の質感は滑らかで、指先で触れるとひんやりとした心地よい温度が伝わってくる。部屋の隅にある小さな隙間に、冬の光が細く差し込んでいた。その光の粒がダンスしているのを眺めていると、何もしないという贅沢が、最高の旅の目的だったことに気づかされる。
地下にあるO Bay PLAYに足を踏み入れた瞬間、それまでの静寂が嘘のように消え去った。ゲーム機の電子音と、誰かの歓喜の叫び声。大人が全力で遊びに没頭している光景は、少しだけ滑稽で、それでいて最高に自由に見えた。僕たちもいつの間にか勝ち負けにこだわり、子供のように言い争っていた。そういう、意味のない熱量こそが、旅の記憶を鮮やかに彩る。
最後は、厚い掛け布団に潜り込み、心地よい疲労感に身を任せた。シーツのパリッとした感触と、かすかに漂う清潔な洗剤の匂い。隣のベッドで誰かが小さく寝息を立てているのが聞こえる。完璧なスケジュールなんて最初からなくて良かった。迷った道も、忘れた荷物も、すべてはこの青い部屋の記憶の一部として、静かに溶けていく。
窓の外では、静かな冬の海がずっと呼吸を続けている。
- O Bay PLAYで時間を忘れて遊ぶ前に、まずは屋上の温泉プールで体を温めておくのが正解。
- 外澳沙灘まで散歩して、冬の冷たい海風に吹かれた後に食べるピザは、格別に美味しいはず。