5年後の私たちへ。あの時、礁溪長榮鳳凰酒店で「大人になっちゃったね」と笑い合ったこと、覚えてる?計画はめちゃくちゃだったけれど、それが正解だった。山あいの静寂と湯気の温度が恋しくなったから、ここに書き留めておくね。
5年後もきっと、指先に残っている記憶
皿が触れ合う音と、三星蔥の芳醇な香り
ビュッフェ会場に満ちる賑やかな喧騒と、カチャカチャと皿が触れ合う軽やかな音。誰が一番皿に盛り付けすぎていたか、今でも賭けられる自信がある。「見てよ、この量!」と笑い合ったあの瞬間、鼻をくすぐる三星蔥の香ばしさが食欲を刺激し、結露したビールのグラスが指先に張り付く冷たさが心地よかった。大人の社交場のような洗練された空間で、私たちはただ「次は何を食べるか」という至極単純な快楽に没頭していた。胃袋が限界まで満たされていくあの幸福感は、5年後もきっと消えない。
足首まで沈み込む、欧州風スイートの厚い絨毯
深夜3時、部屋の明かりをすべて消したあとに訪れる、濃密な静寂。裸足で一歩踏み出したとき、足首まで深く沈み込む絨毯の感触が、まるで外界から完全に切り離された繭の中にいるようで心地よかった。広い欧州風スイートの空間で、ベッドからトイレまでの短い距離をわざわざゆっくりと歩き、自分の足音さえ聞こえない贅沢な空白に浸っていた。「贅沢っていうのは、きっとこういう何もしなくていい時間のことなんだ」と、暗闇の中で静かに確信したあの夜の感覚を忘れたくない。
肌を包み込む、重厚な湯の温度と白濁した視界
温泉に身を委ねた瞬間、肺の奥まで温かさが浸透し、凝り固まった肩の力がゆっくりと溶け出していく感覚。お湯の圧力が肌に心地よくかかり、心まで解きほぐされていく。立ち上る白い湯気で視界がぼやけ、隣にいる友人の輪郭が曖昧になるなか、普段は飲み込んでいた格好つけた本音をポツリとこぼしたのは、きっとこのぬるい湯気のせいだ。温度がちょうどよかったから、心まで柔らかくなっていた。お湯に溶けていく自分たちを感じた、あの親密な時間はかけがえのない宝物だ。
午前6時の、凛とした冷気と青い山並み
早起きしてバルコニーに出たとき、肌を撫でた9月の宜蘭の風。夏の名残と冬の予感が混ざり合ったひんやりとした空気の質感と、対照的に降り注ぐ陽光の柔らかな温かさ。遠くに見える山々の輪郭が、洗いたての絵画のようにくっきりと青く、空の透明度に胸が締め付けられた。「もう一度だけ寝ようか」と誰が最初に言い出したかは覚えていないけれど、あの瞬間、私たちは何にも縛られない、完璧な自由を手にしていた。あの澄み切った青色は、今も瞼の裏に焼き付いている。
5年後の記憶の蓋を開けたとき
たぶん、料理の正確な味や些細な言い間違いは記憶の彼方に消えているだろう。けれど、礁溪長榮鳳凰酒店のあの開放的な空間で、ただ共に呼吸し、笑い転げていたという確かな体感は、身体のどこかに深く刻まれているはずだ。完璧に整えられた贅沢な空間に、私たちの不器用な笑い声が溶け込んでいた、あの心地よい違和感。大人のふりをして贅沢に溺れながらも、中身はあの頃のままだった。そんな記憶が、ふとした瞬間に指先の感覚と共に、鮮やかに蘇ってくるに違いない。
窓の外で、秋の風が白いカーテンをゆっくりと揺らしている。
- 深夜にルームサービスを頼んで、誰にも邪魔されずに夜通し語り合ってほしい。
- 温泉から上がった後、あえて何もしない「空白の時間」を1時間だけ作ること。