← 戻る 沐舍文旅-鐵花秀泰館(臺東縣旅館008號)

影が自分たちより長くなった頃に

湿った風に導かれ、心地よい迷路へ

スマホの画面が不意に暗転し、頼りにしていた地図が消えた。その瞬間に訪れた小さなパニックの中、ふと耳に飛び込んできたのは、街路樹の葉を激しく揺らす湿った風の音だった。それが意外なほど饒舌に何かを語りかけているようで、私たちはしばらくの間、ただ呆然と立ち尽くしていた。9月の台東駅前は、まだ夏の残像を色濃く纏った濃厚な空気が肌にまとわりつき、呼吸をするたびに肺の奥まで熱が染み渡る。潮風と土の香りが混じり合った独特の匂いが、ここが旅先であることを強く意識させた。誰が一番正確に方向を把握しているかという、大の大人がやるにはあまりに不毛な賭けをしていたけれど、結果的に全員が迷子になるという喜劇的な結末に辿り着いた。誰かが「これで正解だ」と自信満々に言い切るたびに、私たちは少しずつ、目的地とは正反対の方向へ歩いていた気がする。けれど、それでいい。予定調和ではない歩幅で、互いの足音が重なったり離れたりする不規則なリズム。それがこの旅の正しい周波数なのかもしれない。アスファルトから立ち上がる陽炎が視界をわずかに歪ませ、遠くで聞こえる電車の警笛や、行き交う人々の賑やかな話し声が、私たちの焦燥感を心地よい期待感へと塗り替えていった。迷うことさえも、この旅の贅沢な一部なのだと、誰かが小さく笑った。

黄金色の路地裏で見つけた、小さな幸福

借りた自転車のチェーンが時折、キィと小さく悲鳴を上げる。その金属音が、静まり返った午後の空気に鋭い線を描き、私たちの意識を今この瞬間に繋ぎ止めていた。9月の光は、真夏のような暴力的な白ではなく、熟した果実のように屈折した、柔らかな金色を帯びている。まるで街全体が巨大なプリズムになったかのように、曲がり角を曲がるたびに、光の色が微妙に、けれど確実に変化していく。私たちはあえて地図を閉じ、名もなき路地へと深く入り込んだ。そこで見つけたのは、白い湯気がもうもうと立ち昇る、古びた小さな豆腐店だった。店主の穏やかな眼差しに促され、口に運んだ揚げ豆腐。外側のカリッとした香ばしい質感と、内側のとろけるような熱さが同時に押し寄せ、出汁の深い香りが鼻腔をくすぐる。その鮮やかな温度差が、心地よく喉を通り抜けていく快感に、「生きててよかった」と誰かが冗談めかして呟いた。誰が一番多く食べるかという、子供のようなくだらない競い合いをしながら、私たちは道端で笑い転げた。目的地へ急ぐことよりも、路肩に咲く名もなき花の色や、通り過ぎる老人の深い皺に刻まれた時間を慈しむこと。それがこの街が教えてくれた、最高に贅沢な時間の使い方だった。光の角度が変わるたびに、私たちの影は長く、ゆっくりと伸びていき、街の静寂に溶け込んでいった。

木の温もりに抱かれ、夜の静寂に溶ける

ようやく辿り着いた沐舍文旅沐舍文旅-鐵花秀泰館(臺東縣旅館008號)のドアを開けたとき、まず私たちを迎えてくれたのは、スタッフの方々の親しみやすい笑顔と、控えめな木の香りだった。チェックインの際、まるで旧友に再会したかのような温かい会話に、旅の疲れがふわりとほどけていくのを感じた。外の喧騒が嘘のように消え、冷房が作り出した心地よい静寂が、火照った身体を優しく包み込む。部屋に入った瞬間、誰が一番いいベッドを確保するかという、静かだが激しい陣取り合戦が始まった。「ここは私の特等席!」と叫んで倒れ込んだマットレスの柔らかさは、一日中自転車を漕ぎ続けた身体を、深い深い場所まで受け止めてくれる。驚くほど優れた遮音性が、外界のノイズを完全に遮断し、ここが自分たちだけの聖域であることを教えてくれた。バスルームで触れたタオルのふんわりとした質感と、正確な温度で肌を撫でるお湯の心地よさに、心からの安堵が込み上げた。部屋の主役とも言える65インチの巨大な画面から流れる青い光が、温かい木目の壁に反射し、部屋の中に幻想的なグラデーションを描いている。夜食に用意されていた温かい芋粥の優しい甘みが、疲れた心までゆっくりと解きほぐしていく。高層階の窓から外を眺めれば、台東の街の灯りが、夜の帳に散りばめられた宝石のように瞬いていた。わざと明かりを消して、その光の粒子を眺めていると、言葉にしなくても隣に誰かがいるという安心感が、部屋の空気を密度の濃いものに変えていく。完璧な計画などなくていい。ただ、この心地よい空間で、互いの存在を静かに確認し合えればそれで十分だという気がした。

窓の外で、夜風が静かに白いカーテンを揺らしている。

  • 鉄花村の夜市で、あえて目的のない店に飛び込んでみる。
  • 沐舍文旅沐舍文旅-鐵花秀泰館(臺東縣旅館008號)で提供される、心温まる芋粥をゆっくりと味わう。

近くのグルメ・スポット

七里香焼きまんじゅう

台東市正気路385巷7号にある30年以上の歴史を持つ地元小吃の老舗。拳大の巨大な焼き小籠包が看板で、外はカリッと中はふんわり、具がたっぷり。自家製甘辛ダレが風味を引き立てます。併せて各種ルーウェイ(燻製煮込み)も提供し、価格は手頃で焼き小籠包は1個25元。正気路と南京路の交差点近くの路地にあり、イートインとテイクアウト両方に対応しています。

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南北餃子館

台東市和平街117号の40年以上続く老舗。薄皮で弾力のある巨大な蒸し餃子が看板で、具がたっぷりジューシー。水餃子、焼きそば、炒め物、家庭料理も揃います。注文は手書きメニュー、タレはセルフ、辛いもの好きには自家製剥皮辣椒(皮むき唐辛子)がおすすめ。2階建ての店内は常に満席に近く、ランチ11〜14時、ディナー17〜20時30分、平均予算約400元。

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カジエルカジキ特産グルメ

台東成功鎮大同路115号にある、地元の鬼頭刀(マハタに似た白身魚)をテーマにした創意小吃店。魯肉飯、蚵仔煎(カキ焼き)、魚羹、フライ、水餃子など台湾料理に鬼頭刀を取り入れた手頃で郷土色豊かなメニューを展開。店内は古い台湾と原住民の要素を組み合わせた活気ある雰囲気で、台湾魯肉飯フェスティバルの推薦やグルメ番組でも取り上げられ、成功鎮の必食スポットです。

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ガジュマル米苔目

台東市中華路一段にある50年以上の歴史を持つ老舗。米苔目(細い米麺)が看板で、自家製唐辛子、黄金キムチ、香ばしい鬼頭刀の唐揚げなど小菜が評判。店内は広く行列時も回転が速く、冷房はないもののスープは飲みやすく昔ながらの味。台東観光で外せない名物料理の一つです。

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