荷物の重さが半分になった瞬間
JR白浜駅からの10分の道のり、汗ばむ背中に風が当たると冷たく感じた。君が先を歩く。荷物を提げる手の甲が日焼けでほんのり赤い。段ボールの底が擦れて、紙の匂いが混ざった埃っぽさが靴下にまで染み込んでくる。扉を押し開けると、ロビーの冷房が一気に肌を包んだ。空調の風が埃を巻き上げて、光の粒が揺れているように見えた。
廊下の足音が消える場所
カーペットの厚みに足が埋もれる。廊下の先で、誰かがドアを閉める音がしたけれど、その振動もすぐに吸い込まれてしまう。時計は20時を指していたけれど、秒針の進み方が遅く感じられた。君が隣に立って、ふと「ねえ」と小声で言った。何気ない一言が、この空間にぴったりと収まった気がした。
畳の上で見つけた、ふたりの呼吸のリズム
ロイヤルフロアの和室に足を踏み入れた瞬間、木の香りと海の塩気が混ざった匂いがした。15畳と10畳の部屋は、想像していたよりもずっと広く、布団の敷き方一つで空間の印象が変わる。窓の外では白良浜の波が岩を叩く音が聞こえる。君が布団に横になって、天井を眺めた。
「 nuovamente 、この音、聞こえる?」
布団の温かさが背中にじんわりと広がる。波の音と一緒に、秋の虫の声が混じり始めた。ふと、君の手が私の手を握った。握り返すと、その体温が自分の体温と同じように感じられた。
窓の向こうで、月がススキを描いている
窓を開けると、白良浜の向こうに沖合いで月が水平線に重なっていた。空気は少し湿っていて、カーテンがかすかに揺れる。祭りの灯りが遠くで点々と光っているけれど、それよりも月明かりの方がずっと強い。波の音が聞こえる一方で、この空間だけは時間が止まっているように感じられた。
君が「月見のススキ、見える?」と小声で言った。窓の外、陸側の岩場には確かにススキが風に揺れていた。その先には、祭りの提灯が海風に揺れている。
私たちは何も言わなかった。ただ、手を繋いだまま、その光景を見つめていた。
窓の隙間から漏れる月の光が、布団の上に小さな銀の模様を描いていた。
- 白良荘グランドホテルのロイヤルフロアに宿泊し、ナイトビューと月見の風景を楽しむ
- 白良浜の早朝散歩で、潮風と秋の空気を体で感じる