廊下の隅に、片方だけ脱ぎ捨てられた小さなスニーカーがあった。つま先がエレベーターの方を向いていて、誰がいつここで脱いだのかを考えるより先に、私はふっと小さく笑った。完璧な旅なんて、最初から期待していなかったけれど、この不完全さこそが、私たちの旅の正体なのだと思う。
柔らかな光と、ジャムに染まった小さな指先
冷たいガラスコップに注がれた健康イオン水の、喉を通る時のひんやりとした感覚。それが、私たちの仙台の朝の合図だった。スーパーホテルPremier仙台国分町天然温泉の朝食会場には、都会の喧騒を忘れさせるような、澄んだ空気が流れている。窓から差し込む柔らかな朝陽が、テーブルに並んだオーガニック素材の料理を優しく照らしていた。下の子はそんな素材へのこだわりなんて気にする様子もなく、パンにジャムを塗りすぎて、指先まで真っ赤に染めている。「見て、赤い手!」とはしゃぐその無邪気な声に、私は思わず苦笑した。一方、上の子は「今日はどっちの桜を見るか」について、大人顔負けの真剣さで議論をふっかけてくる。コーヒーの香ばしい匂いと、子供たちの賑やかな話し声が心地よく混ざり合い、空間全体が温かな雑音に包まれていた。子供が「あ!」と叫んでから、親が「どうしたの?」と反応するまでの、あの数秒の心地よいタイムラグ。その空白にこそ、旅の本当の時間が流れている気がする。急いで出発しなきゃ、と思いつつも、結局は子供のペースに心地よく巻き込まれ、時間はゆっくりと、甘いジャムのように溶けていった。
桜舞う街角、牛タンの香りに誘われて
炭火で焼いた牛タンの、香ばしくて少し野生的な匂い。仙台の街を歩けば、どこからともなくその食欲をそそる香りが漂ってくる。るーぷる仙台に揺られて、私たちはちょうど満開を迎えた桜が舞う通りに出た。外で食べる食事は、いつも想定外の出来事と一緒にやってくる。上の子が「見て!」と指差した先には、一枚の淡いピンクの花びらが、運悪く(あるいは運良く)、下の子の口元にふわりと舞い降りていた。それをそのまま飲み込もうとする子供を慌てて止める。「食べちゃダメだよ!」という私の声に、子供は不思議そうな顔をした。口の周りはタレでベタベタになり、ナプキンがいくらあっても足りない。けれど、そんな「兵荒馬乱」な状況こそが、後から振り返った時に一番愛おしい記憶になる。風が吹くたびに視界が淡いピンク色に染まり、私たちはただ、その色の波に身を任せて歩いた。予定していた観光スポットに辿り着くことよりも、道端で見つけた不思議な形の石や、不意に目が合った野良猫の話で盛り上がる。目的地へ向かう直線的な時間ではなく、寄り道という名の曲線的な時間。それこそが、家族で旅をすることの真の意味なのかもしれない。
湯上がりの静寂と、秘密の夜食タイム
しっとりと肌に吸い付くような、天然温泉のぬるめの温度。スーパーホテルPremier仙台国分町天然温泉の「うるおい美人の湯」から上がった後の身体は、心地よい重みに包まれている。子供たちは、お風呂上がりに配られたオーガニックアメニティの優しい香りを「いい匂い!」とはしゃぎながら、パジャマに着替えていた。部屋に戻ると、そこにはコンビニで買い込んだ色とりどりのスナック菓子と飲み物が散らばっている。上の子が「これが一番いい!」と選んだ、自分にぴったりの枕に顔を埋めてもぞもぞと場所を探している姿を見ていると、こちらまで深い眠気が伝染してくる。夜食のポテトチップスを一枚、口に運んだ時のパリッという乾いた音。それが、一日の終わりの句読点のように静かに響いた。子供たちがいつの間にか規則正しい寝息を立て始めた後、夫婦で静かに、今日起きた「小さな事件」について報告し合う。誰かが泣いたこと、誰かが転んだこと、そして誰かが最高に笑ったこと。それらがパズルのピースのように組み合わさって、私たちの家族という形を、もう一度丁寧に作り直してくれる。暗くなった窓の外では、仙台の街が静かに、深い呼吸をしていた。
枕元に転がった小さな靴下の一足が、明日への静かな合図だった。
- 仙台駅周辺で味わう、もっちりとしたずんだ餅の甘さは、旅の疲れを忘れさせる特別なご褒美です。
- スーパーホテルPremier仙台国分町天然温泉では、自分に合った枕を選べるので、ぜひお子様と一緒に最高の寝心地を探してみてください。