指先に触れるカーペットの、少しだけ硬い、けれど心地よい弾力。老二が「ここは雲の上の家?」と、目を輝かせて聞いてきた。スーパーホテルPremier仙台国分町天然温泉のロビーにある『選べる枕』のコーナーでは、子どもたちがどっちが柔らかいかを競い合っている。あるものは押し返してくるような力強さがあり、あるものは吸い込まれるように深く沈む。子どもたちが枕から枕へと飛び移るたびに、弾むような笑い声が廊下に心地よく反響していた。正解の枕を探すというより、心地よい感触を探すゲームに夢中になっている。その無邪気な光景を眺めていると、旅の目的など最初からどうでもよかったのかもしれない、という贅沢な諦めのような心地になった。
外気はわずか二度。頬を刺すような鋭い冷たさをまとって、天然温泉の湯船にゆっくりと身を沈める。肌に触れるお湯の温度が、凍えていた芯までじわりと浸透していく。肩の力が抜け、身体の輪郭が湯気に溶けてぼやけていく感覚。隣では「あついー!」とはしゃぐ老二の声が、水面に波紋のように広がっている。大人は静寂を求めるけれど、家族と一緒にいるときの静寂は、いつも誰かの賑やかな声が心地よく混ざっている。それがこの場所での、正しいリラックスの形なのだろう。湯から上がった後も、肌に残るしっとりとした潤いが、冬の夜の優しい余韻のように長く続いていた。
ウェルカムバーで、グラスがカウンターに触れる小さな音。カチッ、という乾いた音が、ロビーの開放的な空間に静かに溶けていく。周りには、仕事帰りのビジネスマンや、僕らのような家族連れがいて、それぞれが自分だけの夜の時間を丁寧に過ごしている。誰かが小さく笑い、誰かが深くため息をつく。その断片的な音が重なり合って、このホテルだけの特別なリズムを刻んでいる。耳に残るその音の粒子は、まるで心地よい音楽の末尾のように、ゆっくりと消えていく。誰とも深く言葉を交わさないけれど、同じ空間に身を置いていることで繋がっているという、不思議な安心感に包まれていた。
口の中でほどける、ずんだ餅の粒立ち。ずんだの、少しだけ野趣のある素朴な甘さと、もちもちとした冷たい食感。老二が口の周りを鮮やかな緑色にして、「おいしい!」と満面の笑みを浮かべている。派手なごちそうではないけれど、その一口が冬の仙台の記憶に深く、鮮明に刻まれる。冷たい空気の中で啜る温かい飲み物と、この甘い餅。味覚というものは、その時の温度や光と一緒に記憶されるらしい。後でふと思い出したとき、きっとこの緑色の甘さと一緒に、ホテルのロビーの柔らかな温もりまで思い出せるはずだ。
午前六時半。カーテンの隙間から差し込む、冬の仙台特有の、透き通った青い光。エクストラルームの室内はまだ薄暗く、世界が静止しているかのように静かだ。壁に落ちる影が、時間の経過とともにゆっくりと形を変えていく。老大がまだ深い眠りにあり、規則正しい呼吸音が部屋に満ちている。この時間だけは、誰にも邪魔されない。青い光に包まれた静謐な空間の中で、ただ自分自身の呼吸に耳を澄ませる。何もしないことが、これほどまでに贅沢に感じられるのは、ここが『第二の我が家』のような深い安心感を持っているからだろうか。
指先で丁寧に泡立てた、オーガニックアメニティの石鹸。ひのきの清々しい香りが、コンパクトなバスルームいっぱいに広がる。まるで深い森の中に迷い込んだような、少しだけ懐かしい匂いだ。泡のきめ細かさが指の間を滑らかに滑り、肌を優しく包み込む。高級な香水のような強さはないけれど、嘘のない、誠実な香り。その香りを深く吸い込んでいると、日常で張り詰めていた気持ちがふっと緩んでいく。小さなボトルに詰め込まれた自然の欠片が、旅の疲れを静かに、丁寧に洗い流してくれる気がした。
ソファー付きダブルルームで過ごす、家族の絶妙な距離感。隣の部屋に子どもたちがいることがわかる、かすかな物音。完全に切り離されていないけれど、適度な境界線がある。パジャマに着替えて、ふかふかのベッドに潜り込んだとき、隣から「おやすみ」という小さな声が聞こえてきた。その声が壁を通り抜けて、僕の耳に届く。家族というチームで戦った一日の終わりに、共有される静かな時間。消えそうで消えない、温かな空気の振動が、部屋の中をゆっくりと満たしていた。
窓の外では、静かに雪が降り始めていた。
- 子どもと一緒に『選べる枕』の中から、自分だけのお気に入りを探す時間をぜひ作ってみてください。
- るーぷる仙台のバスに乗って、車窓から冬の街並みを眺める時間は、子どもたちの好奇心を刺激します。