「ここ、ちょうどいいかもね」
「本当にここで合ってる? 迷わなかった?」
君が少し不安そうに、けれど期待を込めた声で僕のコートの袖を軽く引いた。
「大丈夫。あと数分歩くだけだから」
僕はスマートフォンの画面を閉じ、秋の冷たく澄んだ空気を深く吸い込んだ。名古屋駅の出口から歩き始めて数分。街の喧騒がまだ耳の奥で鳴っているけれど、目的地はもうすぐそこにある。非接触カードキーをかざすと、小さく乾いた電子音が響き、扉が開いた。その音が、外の世界との境界線を静かに引き、二人だけの密やかな時間への合図になった気がした。
喧騒の残響が消え、呼吸が重なる場所
十月の名古屋は、空気が凛としていて、肌に触れる風に心地よい緊張感がある。駅前の人混みや車の走行音は、激しい打楽器の連打のように私たちの感覚を叩き続けていた。けれど、相鉄フレッサイン 名古屋駅桜通口のデラックスダブルに足を踏み入れた瞬間、そのノイズはゆっくりと減衰し、心地よい静寂だけが満ちる空間へと変わった。間接照明が落とす柔らかな光が、旅の疲れを優しく包み込んでくれる。
まず心を捉えたのは、水の質感だった。全館に導入されている浄水システム「ソウ美スイ」のおかげか、洗面台で手を洗ったとき、指先に触れる水が驚くほど柔らかく、肌に吸い付くような感覚があった。ぬるま湯の温もりが指先から体温を優しく包み込み、張り詰めていた心と体がゆっくりとほどけていく。私たちは言葉を交わさず、ただ「柔らかいね」とだけ囁き合った。その短い言葉の間に、言葉以上の理解が流れていた。
それから、体を預けたサータ製のベッド。深く、けれど確かな弾力を持って沈み込んでいく感覚は、まるで深い海の底へゆっくりと降りていくような、あるいは長い演奏の後に訪れる完璧な静寂に包まれる心地よさだった。パリッとした清潔なシーツの感触と、加湿機能付き空気清浄機がもたらすしっとりとした空気。隣で君が同じリズムで呼吸をしているのがわかる。もともと歩幅を合わせるのが苦手だった私たちだけれど、この密やかな空間では、無理に合わせなくても自然と心拍が同期していくようだった。
翌朝、一階のミスタードーナツで朝食を囲んだとき、最後の一つをどちらが食べるかで子供のように言い合いになった。半分に割って分かち合ったドーナツの甘い香りと、君の口端についた小さな砂糖の粒。それを照れくさそうに拭う仕草を見たとき、僕の心には鮮やかな色彩が灯った。完璧な二人ではないけれど、激しい音が消えた後の静かな余韻を共有できるなら、それで十分なのだと感じた。誰にも邪魔されないこの空間で、ただそこに在るということ。その贅沢さを、私たちは静かに分かち合っていた。
窓の外で揺れる秋の気配を眺めながら、私たちはただ、静かに隣にいた。
- 1階のドーナツを片手に、名古屋駅の喧騒を遠くから眺めてみて。
- ソウ美スイの柔らかな水で、旅の疲れをゆっくりと洗い流してね。