← 戻る からすま京都ホテル

午前2時のグラスに、月が落ちていた

9月の京都の空気は、どこか重い。濡れたリネンを肩に掛けられたような、しっとりとした温度。地下鉄四条駅の出口から地上に上がった瞬間、地下鉄の風が湿った空気をかき混ぜて頬を撫で、街の喧騒が波のように押し寄せてくる。アスファルトから立ち上がる熱気と、どこか懐かしいお香の香りが混じり合い、肺の奥まで京都の色に染まっていく。私たちはそこで、わざと不便な道を選んで歩くことにした。「正解なんてどうでもいいよね」と誰かが笑った。ただ、この街の緩やかな潮流に身を任せてみたいだけだったから。

からすま京都ホテルで試した「大人の贅沢な遊び」

四条駅からの1分間競争
駅の出口からホテルまで、誰が一番早く辿り着くか賭けた。色とりどりの看板が視界を埋め尽くし、観光客の話し声が心地よいノイズとなって耳に届く中、途中で見つけた古びた看板の不思議な造形に全員が足を止め、誰が勝ったかも分からなくなった。結局、直結しているスターバックスから漂う、香ばしく濃密なコーヒーの香りに誘われて、競争なんて最初からなかったことにした。そんな、くだらない時間さえも、心地よいリズムとなって心に刻まれた。

「大人の社交場」ごっこ
ホテル内のバーで、できるだけ洗練された注文をしようと密かに誓い合った。照明を落とした空間に、ベルベットの椅子の深い色が溶け込んでいる。琥珀色の液体が揺れるグラスを手に、「大人の余裕」を演出してみる。結果、メニューの中で一番名前が複雑そうなカクテルを頼んで、一口飲んだ瞬間に「味が想像と全然違う!」と顔を見合わせて爆笑。張り詰めていた表面張力が一気に弾け、心地よい笑いの波紋が広がった。氷がグラスに当たる高く澄んだ音が、静寂に溶けていった。

和室での全力昼寝選手権
あえて選んだ和室で、誰が一番深く眠れるか競い合った。障子越しに差し込む午後の柔らかな光が、畳の上に淡い縞模様を描いている。結果、一人があまりに激しくいびきをかき、畳の上の空気が物理的に振動しているのが分かった。静寂を愛でるはずが、誰よりも騒がしい午後に。けれど、い草の青い香りと、肌に触れる布団のずっしりとした適度な重みが、都会の真ん中にいることを忘れさせ、深い安心感で私たちを包み込んでくれた。

月見スポットの強行突破
ホテル周辺で最高の月が見える場所を探して、迷路のような細い路地を歩き回った。夜の帳が降りた路地には、どこからか線香のような、静謐な香りが漂っていた。結果、見つけたのは建物の隙間から細長く切り取られた、鋭く銀色の三日月。完璧な景色ではなかったけれど、湿った石畳の冷たさと、狭い路地で肩を寄せ合って空を見上げたあの瞬間が、今回の旅で一番の正解だったのかもしれない。

旅のスコアボード

一番価値があったのは、間違いなくバーでの時間。大人のふりをした自分たちが、あっけなく崩れていく快感。それは水面に溜まった雫が、ある一点を超えて溢れ出す瞬間の心地よさに似ていた。逆に、完璧な計画はジョークに終わったが、スーペリアダブルの清潔な空間と、からすま京都ホテルのロビーに漂う懐かしい静けさが、私たちの乱雑な旅を優しく包み込んでくれた。結局、何も計画しなかったことが、最大の成功だったなと今思う。

冷えたシーツに潜り込み、遠くの走行音を子守唄にする。

  • 恥ずかしがり屋な友人を連れて、バーで一番「似合わない」飲み物を注文してみて。
  • 朝7時、まだ空気が重い時間帯に、四条駅までわざとゆっくり歩いてみて。