3月の湿った風が、首筋に冷たくまとわりつく。228連休の喧騒の中、誰が一番先に迷子になるかという不毛な賭けをしていたけれど、結局は全員で道を見失った。地図を信じすぎたのか、それともあの奇妙な看板に心を奪われたのか。狭い路地裏で雨宿りをしながら、私たちは顔を見合わせて小さく笑った。
炭火がパチパチと爆ぜる音と、香ばしい煙が鼻腔をくすぐる。東大門夜市で出会った原住民料理の山猪肉は、噛みしめるたびに野生の力強さと濃厚な脂の甘みが口いっぱいに広がった。隣では友人が口の周りをタレだらけにして、満足げに笑っている。熱気と喧騒、そして絶え間ない話し声。その混沌とした空気こそが、旅の最高の調味料だった。
「プラン通りに動こうって言ったのは、一体誰だったっけ?」
逆さまに持っていた地図を指差し、誰かが呆れたように呟いた。私たちは計画を立てる才能が絶望的に欠けているけれど、その分、偶然見つけた名もなき景色に心を奪われる回数は多い。効率的に回る旅なんて、私たちの不器用な友情には似合わない。
麗翔酒店の「テュイルリー」ルーム。フランスの庭園をイメージしたという贅沢な空間に、私たちはコンビニで買ったフライドチキンを大胆に広げていた。最高級のしつらえと、ジャンクな食事。この絶望的なギャップが可笑しくて、視線が合うだけで笑いが止まらない。気取った静寂に、私たちの雑多なエネルギーが心地よく混ざり合っていく。
遠くから地響きのように聞こえてくる、太鼓の重いリズム。媽祖の遶境が始まったらしい。街全体がひとつの巨大な生き物のように脈動し、その振動が足の裏から心臓へと伝わってくる。言葉は分からなくても、その圧倒的な熱量に身を任せているだけで、不思議と深い安心感に包まれた。
バスルームのタイルのひんやりとした温度が、火照った肌に心地よい。湯船に浸かりながら、窓の外に広がる太平洋の深い群青色を眺める。3月の海は静謐で、すべてを優しく飲み込んでくれるような色をしていた。肩まで深く浸かった瞬間、旅の心地よい疲れが、お湯に溶け出すようにゆっくりと消えていった。
ふいに降り出した春の小雨が、アスファルトを濃い灰色に染め上げていく。濡れた土の匂いが立ち上がり、空気が一気に澄み渡った。急いでホテルへ戻る道すがら、誰かが「あ、あそこに桐花が咲いてる」と声を上げた。雨に濡れた白く淡い花びらが、灰色の街の中でそこだけ発光しているように鮮やかに見えた。
ガチョウの羽毛布団がもたらす、ずっしりとした安心感のある重み。その中に潜り込むと、外の喧騒が遠い国の出来事のように霞んでいった。隣からは、規則正しい誰かの寝息が聞こえてくる。完璧とは程遠い旅だったけれど、この静寂と信頼があるなら、それで十分すぎるほどだった。
窓の外で、夜市の灯りがゆっくりと、深い夜に溶けていく。
- 東大門夜市で、原住民の石板焼きをぜひ食べてみて。あの香ばしさは反則級だよ。
- 3月の花蓮は、ふらっと歩いて桐花を探すのがおすすめ。白い花が本当に綺麗だから。