スーツケースのキャスターがタイルの上で鳴らす、乾いたリズム。4月の花蓮は、空も海も、遠くの山々の輪郭さえも、すべてが透き通った青に塗り潰されているという気がする。肌に触れる風は少しだけ湿っていて、けれどひんやりとして心地よい。私たちは、「誰が一番先に予定表を捨てるか」という、くだらない賭けをしながらこの街に降り立った。「どうせ計画通りにいかないんだから、最初から白紙にした方が楽じゃない?」そんな、少しだけ不器用な私たちの拠点になったのが康橋商旅だった。
私たちがこのホテルで試した「検証事項」
「胃袋の限界」突破チャレンジ
結果:大失敗。午後3時から夜10時まで提供される無料のスナックや、豪華なビュッフェディナーがあまりに魅力的で、食欲の限界を忘れた。特に熱々の台湾風卵焼きの香ばしい匂いには抗えず、全員が腹八分目のまま眠れなくなり、夜明けまでくだらない議論を戦わせることになった。
早朝7時の「花蓮ブルー」独占計画
結果:成功。駅の正面に出た瞬間、視界に飛び込んできた圧倒的な青さに全員が黙った。冷たく澄んだ空気が肺を満たし、誰が撮った写真が一番「青い」かを競ったけれど、結局、画面越しではなく、ただ隣にいる友人の呆けた顔を見ていた時間の方が正解だった気がする。
「完璧な準備」という幻想の破壊
結果:快挙。誰一人として、完璧に準備できていなかった。充電器を忘れた者、季節外れの服を持ってきた者。でも、ホテルのシンプルながらも機能的な客室に揃っていたアメニティの充実ぶりに救われ、私たちの準備不足がむしろ「旅の醍醐味」ということにすることにした。
スタッフの「聖人君子」度チェック
結果:完敗。ロビーの柔らかな光に包まれながら、どんなに突拍子もない質問をしても、あるいは深夜にふらふらと現れても、彼らは常に穏やかな笑みを絶やさなかった。結局、こちらが先に気まずくなって、丁寧にお礼を言いながら部屋に戻るという、なんとも情けない結末に終わった。
旅のスコアボード
正直に言って、緻密に組んだ旅程表はただの紙屑だった。でも、その代わりに得たものは、予想以上に重みがあった。一番価値があったのは、深夜にロビーで啜った温かい麺の湯気と、誰が言い出したか分からない自虐的な笑い声だ。一番のジョークは、「今回は大人な旅をしよう」と誓い合ったこと。結局、私たちは康橋商旅のふかふかのベッドにダイブして、泥のように眠るまで子供のように騒ぎ続けた。不完全であることの心地よさを、この場所は静かに肯定してくれていた。
窓の外で、4月の風が白いカーテンを小さく揺らしている。
- 深夜2時に、あえて一番好きな深夜食を一人で贅沢に味わってみてほしい。
- 予定を全部白紙にして、スタッフに「今、一番いい場所はどこか」を訊いてみてほしい。