← 戻る 七星潭水上明月海景渡假旅店

濡れたウールの匂いと、小さな手のぬくもり

濡れたウールの匂いと、小さな手のぬくもり

潮風が頬を叩く、濃紺の境界線

1月の花蓮の風は、単なる気流ではなく、物理的な質量を持って押し寄せてくる。唇に触れる空気は塩辛く、肺の奥まで凍てつくような冷たさが染み渡る。七星潭の海岸を歩いていると、太平洋の青があまりに深く、濃すぎて、まるで誰かが巨大なインク瓶を海にぶちまけたかのように見えた。「ねえ、この海、本物じゃないみたい!」と長女が声を張り上げ、次男は足元の小石を一つひとつ、まるで宝石でも鑑定するように真剣に観察しては、歩みを極端に遅くする。私は厚手のセーターに身を包んでいたが、それでも隙間から忍び込む冷気に肩をすくめ、小さく震えた。家族で歩くリズムはバラバラで、誰かが立ち止まれば全員が止まる。効率とは程遠い不器用な歩幅。けれど、そのもどかしさこそが冬の旅の正体なのだと感じた。遠くで砕ける波の音が、低く、重く、身体の芯まで共鳴していた。

重厚な扉の向こう、静寂が溶け出す場所

七星潭水上明月海景渡假旅店の重厚な扉を開けた瞬間、外の世界の喧騒がプツリと途切れた。耳の奥で鳴り響いていた激しい風の音が消え、代わりにベルベットのような濃密な静寂が降りてくる。外気と室温の激しい温度差に、身体がどう反応していいか分からず、数秒間の心地よい空白が生まれた。凍りついていた指先がゆっくりと解け、じわじわと血が巡り始めるあの感覚。ロビーに漂う微かなアロマの香りが、張り詰めていた神経を静かに、そして確実に緩めていく。チェックインの手続きの間、子どもたちは不思議そうに豪華な天井を見上げていた。外ではあんなに騒いでいたのに、この空間の静謐さに当てられて、急に大人びた顔で隣に立っている。温度が変わることで、心まで別のモードに切り替わった気がした。

家族だけの秘密基地、欧州の薫り漂う聖域

部屋に入った瞬間、そこは単なる「宿泊施設」ではなく、私たち家族だけの「秘密基地」へと変貌した。内装はレトロな欧州様式で、典雅で華麗な家具が配置されており、まるで精緻な博物館に迷い込んだかのような錯覚に陥る。シモンズ製のマットレスは驚くほど柔らかく、子どもたちが飛び込んだ途端、大きな白い雲に飲み込まれたみたいに消えていった。部屋の隅々まで行き届いた清潔感があるはずなのに、わずか10分後には、開け放たれたスーツケースから服が溢れ出し、床には脱ぎ捨てられた靴下が転がっている。でも、その乱雑さがたまらなく心地いい。私は、ベッドからトートのトイレまで、裸足で歩いてちょうど七歩であることを確認した。冷たいタイルからふかふかのラグに足が触れる瞬間の、あの小さな快感。バスルームに漂うロクシタンの香りと、白い湯気に包まれた空間。ダイソンのドライヤーから出る強い風が、潮風に濡れていた髪を乾かしていくとき、ようやく「あぁ、ここにいていいんだ」という深い安心感に包まれた。次男が浴袍をマントのように羽織って廊下を走り回っていたが、それを止める気にならなかった。この空間にある自由こそが、私たちが本当に求めていたものだった。贅沢とは豪華な設備のことではなく、誰にも邪魔されずに、ただ一緒に笑い合える時間のことをいうのだろう。

透明な盾越しに、冬の太平洋を飼い慣らす

バルコニーの窓ガラスに額を押し当ててみると、外ではまだ激しい風が吹き荒れ、世界を揺らしているのが分かった。でも、厚いガラス一枚隔てたこちら側は、驚くほど静かで、春のような暖かさに満ちている。外の世界はあんなに騒がしく、冷酷なのに、ここは完璧に守られたシェルターのようだ。1月の海は深く、重い青色をしていて、時折白い波頭が激しくぶつかり合っている。その光景を眺めながら、温かい飲み物をゆっくりと口に含む。冷たい外気と、温かい室内。その境界線に立っているとき、人は自分の輪郭を一番はっきりと感じることができるのかもしれない。子どもたちが隣で、明日行く場所について言い争いながらも、寄り添って眠りにつこうとしている。その小さな寝息を聞きながら、私はふと思った。完璧な旅なんて必要ない。計画通りにいかないこと、誰かが不機嫌になること、そしてそれを塗り替えるような圧倒的な心地よさ。それらが重なり合って、記憶の層を作っていく。私は、わざとセーターを裏返しに着ていたことに、このとき初めて気づいた。少しだけ可笑しくて、誰にも言わずに、ただ静かに笑った。

明日もまた、この温もりを抱いて旅に出よう。

  • 夕食に提供される新鮮な地元食材の料理と、心まで満たされる特製ケーキの甘美な味わいをぜひ堪能してほしい。
  • 博物館のように典雅な欧州風のインテリアに囲まれ、日常を忘れて贅沢な時間に身を委ねるひとときを。

近くのグルメ・スポット

来成排骨麺

來成排骨麺は花蓮市中正路にある1948年創業の老舗小吃店で、独特の排骨酥(リブスーの唐揚げ蒸し)とコラーゲンたっぷりの豚足が看板です。排骨酥は揚げてから蒸すことで外はカリッとし、甘辛クリアなスープと合わさり、豚足はプリプリとした弾力ある食感。この二品を合わせた組み合わせは、地元の食通や観光客が必ず頼む定番メニューです。店内では内用席とチャイルドシートを用意。2025年に移転して駐車が便利になり、家族や友人との会食に最適です。

74

公正包子

公正包子は花蓮市の老舗小吃店で、厚めの甘みある皮が特徴の小籠包で有名です。1個約5台湾ドルで、手作り調味の豚肉餡を包み、パンチが欲しい方は自家製唐辛子ソースを。小籠包以外にも蒸餃、湯包、肉羹麺、酸辣麺、貢丸湯、アイス豆乳、紅茶を取り揃え。2023年末に仁愛街と成功街の角へ移転し、人気の「廟口紅茶」の向かいに。小さな店構えですが地元民と観光客の長蛇の列が絶えず、花蓮に来たら外せない必食スポットです。

62

公正街包子店

公正街包子店は花蓮市街の40年以上続く老舗小吃で、厚皮の小籠包と蒸餃が看板です。生地は手で延ばして柔らかくモチモチ、ほんのり甘く、シンプルな味付けの肉汁あふれる豚餡を包みます。蒸餃、湯餃、肉羹麺、酸辣麺、貢丸湯、アイス豆乳、紅茶なども提供。2023年末の移転後も人気は健在で、行列は減りましたが花蓮の必食小吃として外せません。価格も手頃で、小籠包は1個約5〜7台湾ドル、気軽に食べられる手軽さが魅力です。

67

周家蒸餃

周家蒸餃小籠包は花蓮市の公正街にある老舗で、50年近くにわたりその場で包んで蒸す蒸餃と小籠包が看板です。3種類の蒸餃、手作り小籠包、酸辣湯、肉羹湯、ルーロー飯など多彩なメニューを取り揃え、24時間営業。朝食、ランチ、ディナー、夜食とどんな時間でも利用できます。蒸餃は10個で約30台湾ドル、小籠包は10個で約40台湾ドルと手頃で味も鮮やか。長蛇の列が日常で、地元民と観光客双方の必訪グルメスポットです。

62