← 戻る 旅人驛站鐵花文創二館

冬のポケットの中で、小さな手が温かかった

湯気の向こう側に広がる、家族の賑やかな朝食風景

温かい豆乳から立ち上がる白い湯気が、眼鏡をじわりと曇らせる。視界が白く塗りつぶされた瞬間、世界が急に静まり返った気がした。けれど、それはほんの一瞬の静寂に過ぎない。すぐに隣から「パパ、これ食べていいの?」という高い声と、フォークが皿に当たるカチャカチャという騒がしい音が飛び込んでくる。旅人驛站の朝食ビュッフェは、大人にとっては静かな一日の始まりを整える場所かもしれないが、子供たちにとっては未知の味を攻略する某種の探検ルートなのだ。長男は慣れない台湾の朝ごはんを前にして、少しだけ眉をひそめながらも好奇心に負けて一口だけ口にし、また皿に戻す。次男に至っては、パンにジャムを塗りすぎて、テーブルの上に小さな赤い湖を作っていた。私はそれを溜息混じりに拭き取りながら、冷めかけたコーヒーを口にする。温度はちょうどいいけれど、心の中は少しだけ慌ただしい。「完璧なスケジュールなんて、最初から幻想だったのかもしれないな」と、ふと独り言が漏れた。けれど、その「慌ただしさ」こそが、家族で旅をしているという実感を、皮膚に直接触れさせてくれる。子供たちが口の周りをソースで汚しながら、互いに笑い合う様子を眺めていると、胸のあたりがじんわりと温かくなる。それはきっと、1月の台東の冷たい空気があるからこそ、より鮮明に感じられる温度なのだろう。誰かがこぼしたジュース、賑やかな話し声、そして窓から差し込む淡い光。それらが混ざり合って、私たちの朝という一つの曲が出来上がっていく。そんな心地よい混沌に、私は静かに身を委ねていた。

潮風に誘われて、路地裏で見つけた小さな贅沢

ホテルの外に出た瞬間、太平洋から吹き付ける風が頬を鋭く撫でた。1月の台東の風は、どこか塩の匂いが混じっていて、肺の奥まで洗われるような感覚になる。コートの襟を立てて、子供たちの小さな手を握る。彼らの手は驚くほど小さくて、でもしっかりと私の指を握り返してくれた。旅人驛站から鉄花村の方へと歩く道は、観光地というよりは、誰かの生活がそのまま滲み出しているような、不思議なリズムがある。ふと、次男が足を止めて道端の石ころを真剣に眺め始めた。「見て!この石、お魚の形してる!」と言われて見ると、確かに、どう見てもただのグレーの石だったけれど、彼の瞳の中ではそれは立派な魚だったのだろう。私たちはそこで5分間、ただ石を眺めて過ごした。効率的に観光地を回るなんて、この子たちには無理な話だ。その後、ふらりと立ち寄った老舗の氷店で、塩味の効いた不思議なアイスを食べた。舌の上に広がる鋭い冷たさ。けれど、後からやってくる濃厚な甘みが、凍えかけた体にゆっくりと染み渡る。子供たちは「しょっぱい!でもおいしい!」と顔を見合わせて笑っていた。大人は「こんな時間にアイスなんて」と理屈を考えるけれど、子供たちは今、この瞬間の味だけに集中している。そのシンプルさが、なんだか羨ましくなった。歩道に落ちている枯れ葉の乾いた音、遠くで聞こえるバイクのエンジン音、そして子供たちの弾む足取り。予定していた目的地には辿り着かなかったけれど、道端で見つけた「魚の形の石」の方が、きっと彼らにとっては大切な思い出になる。旅っていうのは、目的地に着くことじゃなくて、道中でどれだけ心地よく「迷子」になれるかということなのかもしれない。

静寂に溶け込む、夜の果実と家族の体温

深夜2時。部屋の明かりを落とし、間接照明だけの柔らかな光に包まれる。隣では、さっきまで暴れ回っていた子供たちが、深い眠りに落ちていた。彼らの規則正しい呼吸音が、部屋の中に静かなリズムを刻んでいる。旅人驛站の客室は装飾こそ簡素だが、それがかえって心を落ち着かせてくれた。ベッドは心地よい適度な硬さがあって、身体を預けると、一日中張り詰めていた肩の力がふっと抜けていく。私たちは、無料Wi-Fiで調べた地元の評判の良い店で買っておいたフルーツを、小さな皿に並べて分かち合った。甘酸っぱいパイナップルの香りが、狭い部屋の中にゆっくりと広がっていく。昼間の喧騒が嘘のように静かな時間。パートナーと視線を交わし、言葉もなく小さく笑い合う。今日、長男が転んで泣いたこと。次男が道端の石に名前をつけたこと。そんな、日記に書くほどでもない、けれど捨てられない断片的な記憶が、夜の静寂の中でゆっくりと整理されていく。孤独というものは、一人でいることではなく、誰かと一緒にいても、自分だけの静かな場所を持てないことなのかもしれない。今、この瞬間、子供たちの寝顔を眺めながら、私は自分の中にある「静かな場所」を取り戻している気がする。明日になればまた、戦場のような朝がやってくるだろう。でも、その混沌さえも、今の私には愛おしい。暗闇の中で、子供の小さな手が私の腕にふわりと触れた。眠っているはずなのに、無意識に誰かを探しているのだろう。その温もりが、私の心にある空白を、ちょうどいい具合に埋めてくれた。旅の終わりが近づく寂しさよりも、いまここにある温度への感謝が、ゆっくりと胸に溜まっていく。それは、どんな高級なアメニティよりも、私を深く癒してくれる贅沢だった。

カーテンの隙間から、1月の静かな夜明けが忍び寄っていた。

  • 曾記涼泉芳冰店で、大人の好奇心を刺激する「塩味のアイス」をぜひ試してほしい。
  • 鉄花村の散歩道で、あえて地図を捨てて、子供が見つけた「小さな発見」に付き合ってみること。

近くのグルメ・スポット

七里香焼きまんじゅう

台東市正気路385巷7号にある30年以上の歴史を持つ地元小吃の老舗。拳大の巨大な焼き小籠包が看板で、外はカリッと中はふんわり、具がたっぷり。自家製甘辛ダレが風味を引き立てます。併せて各種ルーウェイ(燻製煮込み)も提供し、価格は手頃で焼き小籠包は1個25元。正気路と南京路の交差点近くの路地にあり、イートインとテイクアウト両方に対応しています。

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南北餃子館

台東市和平街117号の40年以上続く老舗。薄皮で弾力のある巨大な蒸し餃子が看板で、具がたっぷりジューシー。水餃子、焼きそば、炒め物、家庭料理も揃います。注文は手書きメニュー、タレはセルフ、辛いもの好きには自家製剥皮辣椒(皮むき唐辛子)がおすすめ。2階建ての店内は常に満席に近く、ランチ11〜14時、ディナー17〜20時30分、平均予算約400元。

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カジエルカジキ特産グルメ

台東成功鎮大同路115号にある、地元の鬼頭刀(マハタに似た白身魚)をテーマにした創意小吃店。魯肉飯、蚵仔煎(カキ焼き)、魚羹、フライ、水餃子など台湾料理に鬼頭刀を取り入れた手頃で郷土色豊かなメニューを展開。店内は古い台湾と原住民の要素を組み合わせた活気ある雰囲気で、台湾魯肉飯フェスティバルの推薦やグルメ番組でも取り上げられ、成功鎮の必食スポットです。

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ガジュマル米苔目

台東市中華路一段にある50年以上の歴史を持つ老舗。米苔目(細い米麺)が看板で、自家製唐辛子、黄金キムチ、香ばしい鬼頭刀の唐揚げなど小菜が評判。店内は広く行列時も回転が速く、冷房はないもののスープは飲みやすく昔ながらの味。台東観光で外せない名物料理の一つです。

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