4月の台東は、空の色がどこまでも深く、濃い。海から吹き付ける湿り気を帯びた風が、肌に張り付いた日常の疲れをすべて洗い流してくれるような、心地よい温度だった。旅人驛站鐵花文創館[臺東縣合法旅館016號]に足を踏み入れた瞬間、視界を塗りつぶしたのは、深く静かな青色。その色彩に包まれた途端、強張っていた肩の力がふっと抜け、肺の奥まで澄んだ空気が届く感覚があった。まるで深い海の底に潜り込んだときのような、静謐な安らぎがそこにはあった。
家族での旅は、いつだって予定調和とは程遠い。上の子がわがままに方向を指し示し、下の子が不意に空腹を訴えて泣き出す。けれど、そんな不協和音さえも、この場所では心地よいリズムに聞こえてくる。モダンな独立客室の清潔な空間と、窓から差し込む柔らかな光が、私たちの心をゆっくりと解きほぐしていった。
心に刻まれた、家族の記憶を奏でる五つの音
1. キャリーケースの車輪が、アスファルトの小さな亀裂を乗り越える「ガタン」という鈍い音。パパが引く荷物の振動が、足裏を通じて心地よく伝わってくる。それは、日常という重いコートを脱ぎ捨てて、ようやくこの楽園に辿り着いたという、安堵の合図だった。
2. 「ここ、青いお家なの?」と、下の子が弾んだ声で尋ねる音。旅人驛站鐵花文創館[臺東縣合法旅館016號]の鮮やかな壁に目を輝かせる子供の純粋な問いかけが、廊下に心地よく反響する。その無垢な響きが、大人の凝り固まった思考を、春の雪のように柔らかく溶かしていく。
3. 窓の外から遠く漂ってくる、鐵花村の夜市の賑やかなざわめき。人々の笑い声や、遠い音楽の低音が、胸のあたりでかすかに震える。完全に遮断されないその喧騒は、孤独ではなく、世界という大きな流れと繋がっているという不思議な安心感を与えてくれた。
4. 全員がベッドに倒れ込んだときの、シーツが擦れる「ササッ」という大きな音。一日の疲れが重力に従ってマットレスに吸い込まれ、部屋に設置された平面テレビの淡い光が壁を照らす。寝ぼけて私の腕を掴んだ子の手の温もりが、どんな贅沢な設備よりも心を充足させてくれた。
5. 朝、ロビーの軽食バーでスプーンが陶器の器に触れる「チリン」という小さな音。温かいお粥の湯気が鼻先をかすめ、胃のあたりからゆっくりと体温が上がっていく。特別な会話はなくても、同じリズムで食事をすること。それが家族というチームの、静かな確認作業なのだろう。
途中で、下の子が左右逆の靴を履いたまま誇らしげに歩いていた。それを直そうとしたけれど、なんだかその不格好さが愛おしくて、私たちはしばらくの間、そのままの彼を笑って眺めていた。青い壁に囲まれたこの場所で、私たちはただ、一緒にいることの贅沢さを噛み締めていた。
青い静寂に包まれて、私たちはただ、家族であることの心地よさに浸っていた。
- 旅人驛站鐵花文創館[臺東縣合法旅館016號]から歩いてすぐの鐵花村へ、あえて地図を持たずに迷い込んでみるのがおすすめ。
- 4月の台東は風が心地よいので、子供と一緒に海辺でただぼーっと、空の色が変わるのを眺めてほしい。