プラスチックのボールがぶつかり合う乾いた音。小さな電動カーが壁にぶつかる鈍い響き。子供用プレイルームに足を踏み入れた瞬間、そこはもう賑やかな戦場だった。上の子はゲームに没頭し、下の子は色とりどりのボールプールに深く潜っている。高級ホテルのエレガントな旅を想像していたけれど、結果的にここが一番の目的地になった気がする。子供たちの瞳が、純粋な喜びに塗りつぶされていく様子を眺めるのは、案外心地よいものだ。
お湯の温度が、ちょうどいい。指先からゆっくりと、一日の緊張が溶け出していく感覚。子供たちがようやく眠りにつき、家族向けにアップグレードされた広い客室に訪れた静寂は、耳が痛くなるほど濃い。タイルのひんやりとした感触が足裏に伝わり、それから深い湯船に身を沈める。誰にも邪魔されない十分間。この空白の時間があるから、明日もまた「パパ」や「ママ」という役割を、笑顔で演じられるのかもしれない。
外に出れば、すぐそこは夜市の喧騒だ。揚げ物の香ばしい匂いと、威勢の良い呼び込みの声。そこから台東喜來登酒店のロビーに戻ると、空気の密度がふっと変わる。透明なエレベーターに乗り込み、ゆっくりと上昇する。足下に広がる書屋の景色が、次第に遠ざかっていく。外の騒がしさが、網膜に焼き付いた残像のように、静謐な空間の中でゆっくりと消えていく。その鮮やかな切り替わりが、心地よかった。
朝食の「阿力海」ビュッフェで、海鮮粥から立ち上がる白い湯気。スプーンですくうと、濃厚な出汁の香りが鼻をくすぐる。台東名物の米苔目は、もちもちとした食感が心地よく、口の中でゆっくりとほどけていく。下の子が「このお粥の中のお魚はどこから来たの?」と不思議そうに聞いてきたけれど、正確な答えはわからない。ただ、温かい食べ物が胃に落ちていくとき、家族の間の緊張がふっと緩むのがわかった。
11月の台東は、空気が少しだけ冷たい。平均気温22度。日差しはまだ強いけれど、影に入ると肌をなでる風に秋の気配が混ざっている。ロビーの高い天井から差し込む光が、床に長い影を作っていた。その光の粒子が、微細な埃と一緒にゆっくりと舞っている。急がなくていい。どこへも行かなくていい。ただ、この黄金色の光の中に浸っているだけで、十分な気がする。
真っ白なリネンの、少し硬い質感。ベッドに飛び込んだとき、肌に触れるシーツの温度が、体温をゆっくりと奪っていく。子供たちが乱暴に跳ね回った後のシーツには、小さなシワがたくさん寄っていた。完璧に整えられたショールームのような部屋よりも、誰かがそこにいた痕跡がある空間の方が、ずっと安心できる。それが、旅の正体なのかもしれない。
最後は、みんなで一つの大きなベッドに潜り込む。左右から伝わってくる、小さな、不規則な呼吸。子供たちの体温が、布団の中でじんわりと広がっていく。外では夜風が吹いているけれど、ここには誰にも侵されない、小さな温もりの塊がある。もしかすると、旅の目的は新しい景色を見ることではなく、こうして誰かと密着して、ただ静かに呼吸を合わせることだったのかもしれない。
深い眠りに落ちる直前、誰かが小さく笑った気がした。
- 鉄花村まで徒歩5分なので、子供が飽きる前に、夜のランタンの光を散歩しながら眺めるのがおすすめ。
- プレイルームで子供を思い切り遊ばせてから、大人は屋外プールやサウナで静かにリセットするのが正解。