地図アプリがフリーズして、自分たちが同じ場所を三回回っていることに気づいた。でも、誰もそれを指摘しなかった。ただ、風に混じって百合の花の甘い匂いがしただけ。私たちは、迷うことをあきらめたのではなく、迷うことを楽しむことに決めたのかもしれない。
5月の台東で私たちが「検証」したこと
早朝のプールで「静寂」を味わう試み
水温は少し低めで、肌に触れた瞬間に心臓が跳ねる感じ。知本芙儷渡假酒店の屋外プールで、私たちはあえて一言も喋らずに瞑想することにした。結果、3分後に誰かが盛大に鼻から水を吸い込んでむせ、そこから「誰が一番長く潜れるか」という、最高に低レベルな競争に発展した。静寂なんて、私たちの間には最初から存在しなかったという気がする。
朝食ビュッフェを「大人の余裕」で攻略する
5メートルの吹き抜けから降り注ぐ光が、プレートの上の卵料理を照らしている。私たちは「今日はゆっくり、少量ずつ」と誓い合った。結果、気づけばプレートは山盛りになり、誰一人として「余裕」なんて言葉を思い出せなくなっていた。口いっぱいに地元の味を詰め込みながら、互いの頬を指差して笑う。あの時の、胃袋が心地よく重い感覚だけは、今でも鮮明に覚えている。
路地裏の豆腐店で「正解の豆花」を探す旅
5月の台東は、湿り気を帯びた風が肌にまとわりつく。豆花を一口食べたとき、舌の上に残る大豆の濃厚な甘みと、わずかな塩気のバランスに、私たちは言葉を失った。結果、どのお店も「ここが正解だ」という結論になり、結局、全店を制覇しようとして歩き疲れた。足の裏に感じるアスファルトの熱さと、口の中の冷たさ。その矛盾した温度感が、なんだか心地よかった。
夜の森でホタルという「光の粒子」を追いかける
足元の草がしっとりと濡れていて、靴の中までじわじわと湿気が染みてくる。暗闇の中で、小さな光が点滅するたびに、私たちは子供のように声を上げた。結果、ホタルを見つけることよりも、暗闇で誰が誰の足を踏んだかという不毛な議論に時間を使いすぎた。でも、あの濃い緑の匂いと、時折聞こえる正体不明の虫の声が、私たちを日常から少しだけ切り離してくれた気がする。
結局のところ、誰の勝ちだったのか
実のところ、この旅に「正解」なんてなかったと思う。むしろ、計画通りにいかなかったことの方が、後から振り返ると贅沢な時間だった。知本芙儷渡假酒店のロビーに足を踏み入れたとき、石材の冷たさと高い天井に、私たちは一瞬だけ「いい大人が来た」という顔をした。でも、部屋に戻って、白いシーツの上にダイブした瞬間に、その化けの皮は剥がれた。私たちは、洗練された旅をしたかったのではなく、ただ一緒にバカになりたかっただけなのかもしれない。
5月の台東は、百合の花が咲き乱れ、山と海が互いの境界線を曖昧にしている。その曖昧さに心地よさを感じながら、私たちはホテルの冷たいタイルに寝転がって、誰が一番ひどい迷子になったかを言い合った。高級なアメニティの香りよりも、濡れた髪のまま笑い転げたあの時間の、ざらついた手触りの方がずっと好きだ。完璧なスケジュールよりも、不意に訪れた雨に慌てて軒下へ逃げ込んだときの、あの肩が触れ合う距離感。そういう、名前のつかない断片的な記憶こそが、この旅の本当のハイライトだったという気がする。もしかしたら、私たちは旅を通じて何かを見つけたのではなく、ただ「持っていないこと」を共有して笑い合っただけなのだろう。
窓の外では、濃い緑がゆっくりと、でも確実に、建物の白い境界線を塗り替えていた。
- 誰が一番先に寝落ちするか、真っ白なベッドの上で賭けてみて。
- 予定を全部捨てて、ホテルのロビーでぼーっと1時間、天井を見上げてみて。