「ここ、意外と冷えてるね」
君が小さく呟いた。私は何も答えず、ただエアコンの低く一定な唸り声に耳を澄ませていた。外は八月の台中。肌に張り付くような湿気と、暴力的なまでの太陽の光が、意識を白く塗りつぶしていく。そこから逃げ込むようにして入った楓華沐月台灣大道行館 Hotel Maple Taiwan Boulevardのロビーは、まるで別の時間軸にあるみたいだった。
「本当に。外とは別世界みたい」
私がようやく口を開くと、君は少しだけ照れくさそうに笑った。私たちはまだ、お互いの心地よい距離を測りかねていて、大理石の床が放つ冷気の中で、わざと少しだけ離れて立っていた。
静寂に溶け合う、二人の輪郭
裸足で踏み出したフロアの大理石が、驚くほど冷たかった。そのひんやりとした感触が足裏から脳まで突き抜ける感覚に、ふと肩の力が抜ける。もしかしたら、今の私たちに必要なのは、こういう正気を取り戻させるくらいの冷たさだったのかもしれない。
私たちの関係は、乾いた画用紙の上に落とされた二つの異なる色の墨のようなものだった。最初は明確な境界線があって、混ざり合うことを拒んでいる。けれど、楓華沐月台灣大道行館 Hotel Maple Taiwan Boulevardの静寂に身を任せていると、その輪郭がゆっくりと、本当にゆっくりと滲み出していくのがわかった。それは、無理に合わせようとする努力ではなく、ただそこに在ることで自然に溶け合う、化学反応に近いプロセスだった。
朝のビュッフェ形式の朝食で味わった割包の記憶が、今も舌の上に鮮やかに残っている。甘辛い豚肉の濃厚なコクと、雲のようにふんわりとした生地の質感。口いっぱいに広がる温もりが、私たちの間のぎこちない沈黙を、心地よい静寂へと変えてくれた。11階のレストランから見下ろす台湾大通りの景色は、色とりどりの光の粒がゆっくりと流れる川のようだった。私たちは並んで座り、言葉を交わさなくても、同じ景色を共有しているという事実に、小さく安堵していた。
客室に戻り、パリッとした清潔なシーツに指を滑らせると、微かに洗剤の清々しい香りが鼻をくすぐる。窓から漏れ聞こえる街の喧騒が、かえってこの空間の静けさを際立たせていた。ベッドからバスルームまでのわずかな距離にさえ、今は二人で共有しているという充足感が満ちている。
台中第二市場まで歩いたとき、忽然降ってきた雨に打たれて、私たちはどちらからともなく笑い出した。濡れたシャツが肌に張り付く不快感さえ、二人で共有すれば、それは単なる「出来事」ではなく、後で思い出すための「記憶」に変わる。完璧な旅なんていらない。ただ、こうして不器用なリズムを合わせながら、少しずつ色の重なりを楽しむことができれば、それで十分なのだ。この部屋の柔らかな照明が、私たちの影を一つに重ね合わせていた。
窓の外で、雨上がりの空が濃い紫色に染まっていく。
- 11階のレストランで、街の灯りが宝石みたいに輝き出す時間を一緒に眺めてほしいな。
- 朝食の割包を一口食べてから、二人でゆっくりと第二市場まで散歩して、街の呼吸を感じてみて。