荷物と子供と、カーペットの厚み
エレベーターのドアが開くと、子供たちの足音が一気に広がった。4歳の次男は靴を脱ぎ捨てて走り出し、6歳の長男は荷物の重さに文句を言いながらも、それでも足を止めなかった。カーペットの感触が足の裏に残る──厚みがあって、吸い込むように柔らかい。このホテルのロイヤルフロアは、子供の足音をまるで包み込むように設計されているらしい。
受付で「白良荘グランドホテル」と告げると、スタッフはにっこり笑って「ロイヤルフロアのお部屋ですね。お食事は個室でお楽しみいただけます。レイトチェックアウトも11時まで可能ですよ」と教えてくれた。長男は「レイトチェックアウトって何?」と聞いたが、次男はすでにロビーの隅に置かれた紅葉のリースを触り始めていた。リースは乾燥した葉のざらつきと、うっすらと残る樹脂の匂いがした。
荷物を運び込む間、子供たちはすでに廊下の奥へと消えていった。足音がカーペットに吸い込まれる音だけが、かすかに残った。
子供が見つけた、見えないもの
子供たちはロイヤルフロアの「岬」という貴賓室に泊まることになった。15畳の間と10畳の間、それに応接間があって、海が一望できるのだという。子供たちは早速、布団の山を発見して大興奮。次男は布団にダイブして「これ、雲みたい!」と叫んだ。長男は窓際に立って「海が青い!」と大声で報告したが、実際には海は灰色がかった青で、空との境目が曖昧だった。
子供たちが部屋を探検している間、大人はロビーのソファに座って紅茶を注文した。紅茶のカップがテーブルに触れた瞬間、子供の足音が再びホールに響き渡った。今度は長男が浴衣を着て、裾をたくし上げて走り回っていた。浴衣の袖が風を切る音が、なんだか楽しげだった。
「温泉って魚がいるの?」と次男は忽然聞いた。温泉の湯気で曇った窓ガラスを指差していた。大人は一瞬言葉に詰まったが、スタッフが「温泉で魚が泳いでいるところを見たお客様がいらっしゃいましたね」と教えてくれた。子供たちは目を輝かせて「行ってみよう!」と大騒ぎになった。
子供の寝息と、海の音
子供たちが寝たのは、 surprisingly 早くだった。6時半には布団に潜り込み、7時にはすやすやと寝息を立てていた。大人は浴衣に袖を通し、部屋のバルコニーに出た。潮風が頬を撫でる。海は暗い灰色で、波が岩に当たる音が聞こえた。
ロイヤルフロアの窓から見える白良浜は、夜の闇に沈んでいた。でも、波の音だけは確かに聞こえた。子供部屋のドアの隙間からは、かすかに布団のもそもそという音が漏れていた。大人はコーヒーを一口飲み、海を眺めた。
「今日って、何の日だっけ?」大人は小声で呟いた。長男は「忘れ物した」などと寝言を言った。
靴を履き直す、その前に
朝の6時半。次男は布団から這い出して「もう起きた!」と宣言した。長男は布団の中で「あと5分」と呟いたが、目はすでに開いていた。大人はベッドから起き上がり、カーテンを開けた。白良浜の砂浜が朝の光を反射していた。
チェックアウトの時間は11時。でも、子供たちはすでに「もう1泊したい」と言い始めていた。次男は「浴衣を着て走り回りたい!」と駄々をこね、長男は「布団の山で雲ごっこをしたい!」と主張した。大人は笑って「また来ようね」と言ったが、子供たちは聞いていなかった。
- 白良荘グランドホテルのロイヤルフロアでは、子供の足音がカーペットに吸い込まれる感触を確かめてみて。厚いカーペットが子供たちを優しく包み込む瞬間を体験できる。
- 10月の白浜は紅葉のシーズン。ロビーの隅に飾られたリースや、朝の海の色合いを、写真ではなく「記憶」として持ち帰ろう。