← 戻る FIVE SPRING RESORT THE SHIRAHAMA

パジャマのままで、海の色を数えていた

パジャマのままで、海の色を数えていた

黄金色の光と、潮風が運ぶ贅沢な目覚め

焼きたてのパンが放つ香ばしい芳香と、深く焙煎されたコーヒーの苦い匂いが心地よく混ざり合う。FIVE SPRING RESORT THE SHIRAHAMAの朝は、そんな穏やかな音色で幕を開ける。オールインクルーシブの贅沢な空間に身を置き、目の前に出されたのは、鮮やかな紅色の輝きを放つ伊勢海老だった。その硬い殻の質感と、弾力のある身の甘みが、いま自分が南紀白浜という特別な地に立っていることを身体の芯まで教えてくれる。大人がその至福の味わいに深く頷いている傍らで、下の子はビュッフェの隅にあるシンプルなフルーツに夢中だった。高級な食材よりも、目の前にある真っ赤なイチゴの甘酸っぱさに心を奪われる。その純粋な選択こそが、この旅における正解な気がして、ふっと笑みがこぼれた。「見て、本当に赤いよ!」とはしゃぐ子供の声が、静謐な空間に心地よく響く。芝生テラスへ出ると、十月の少し冷たい風が頬を撫で、澄み切った空気が肺の奥まで洗っていく。上の子が「あっちに鳥がいる!」と叫んで走り出したとき、ホテルの完璧に整えられた静寂という名のコンクリートを、家族の賑やかさという根っこが、ゆっくりと、けれど確実に突き破っていく心地よさを感じていた。

白い砂の記憶と、不完全な昼食の幸福

白良浜の眩いほどに白い砂が、靴の中でジャリジャリと小気味よい音を立てる。お昼に立ち寄った地元の小さなお店で食べた軽食は、洗練とは程遠い素朴なものだったが、潮風にさらされて空腹になった身体には、ちょうどいい温度だった。海風に煽られ、子供の口の端にはソースがべったりとついている。拭おうとしても、彼らは止まらない。真っ白なキャンバスのような砂浜を全力で駆け抜ける子供たちの後ろ姿を追いかけながら、私はふと思った。もともとは優雅で完璧な家族旅行を計画していたはずなのに、現実は泥だらけの靴と、止まらない笑い声と、心地よい疲労感に包まれている。けれど、それでいい。予定調和なスケジュールなんて、きっと退屈なだけだ。旅の本当の価値は、計画が崩れた瞬間に生まれる「あ、これでいいんだ」という、諦めに似た深い安心感にあるのかもしれない。指先に残った塩気と、弾けるような子供たちの笑い声。それが、どんな高級なコース料理よりも鮮烈に、記憶の底に刻まれる最高の味になった気がした。

深い藍色の静寂と、心を満たす夜の儀式

部屋に戻り、グレイト・ベアの客室に備えられたサータベッドの深い沈み込みに身体を預ける。それはまるで、巨大で柔らかな雲に飲み込まれていくような感覚だった。子供たちはその心地よさに抗えず、いつの間にか規則正しい寝息を立て始めている。マットレスを通じて伝わってくる彼らの小さな身体の重みは、私にとって心地よい責任感のような温もりとして感じられた。部屋の壁に飾られたアートに、間接照明の柔らかな光が灯っている。昼間は大胆に主張していた色彩が、夜の帳が下りると静かに溶け合い、深い呼吸を促してくれる。冷蔵庫から出した冷たい飲み物を一口飲み、ようやく訪れた静寂に耳を澄ませる。昼間の喧騒が、心地よい余韻となって部屋の隅々にまで満ちていた。ふと、上の子が寝言で「また海に行きたい」と小さく呟いた。その一言が、この旅のすべてを肯定してくれた気がする。私たちはただここにいて、一緒に笑い、一緒に疲れ果てた。それだけで、十分すぎるほど贅沢な時間だったのだ。パジャマのままで、窓の外に広がる夜の海の色を、ゆっくりと数えていた。

深い紺色の海に、星屑が静かに溶け込んでいた。

  • 朝食のハーフビュッフェでは、地元の新鮮なアワビの食感をぜひ堪能してほしい。大人の贅沢と子供の好奇心が共鳴する、豊かな時間になるはずだ。
  • 客室に飾られたアートを、あえて照明を落とした夜に眺めてみてほしい。昼間とは異なる、静かな物語が聞こえてくるかもしれない。