仙台の秋、家族の記憶を刻む五つの音
1. ロビーで受け取った、ずっしりと重い鍵が手のひらで小さく鳴る音。最近のホテルでは珍しい物理的な鍵の冷たい金属の感触が、指先に心地よく伝わります。スタッフさんの穏やかな会釈と、丁寧に手入れされた洋風の絨毯が放つどこか懐かしい香りに包まれ、「ああ、ここから旅が始まるんだな」という実感が、静かに、でも確実に心に降りてきました。
2. 高い天井から吊るされたシャンデリアの光が、プリズムのように細かく砕けて、大理石の床に虹色の粒を散らばらせています。そこを、下の子が好奇心いっぱいに走り抜ける時に鳴る、小さなスニーカーのキュッという高い音。格式高く静まり返ったはずの豪華な空間が、子供の奔放なリズムで鮮やかに塗り替えられていく。その不協和音こそが、今の私たちには一番心地いい音楽に聞こえました。
3. レストランで、立ち上るお味噌汁の白い湯気と一緒に聞こえてくる「これ、食べたくない」という上の子の、小さくて頑固な抗議の声。それに合わせて、陶器の器がテーブルに当たるカチッという乾いた音が響きます。私は「一口だけ食べてみて」と小さく笑いながら、深いコクのあるコーヒーの香りに包まれ、やっと訪れた一日の始まりの静寂を味わっていました。それぞれが違う方向を向いているのに、同じテーブルに集まっているという、不思議な安心感に満たされた時間です。
4. 江陽グランドホテルの外へ出て、九月の風に揺れるススキがサササッと白く擦れ合う音。空気の温度がふいに下がり、頬に触れる風が少しだけ冷たく、けれど心地よく通り抜けていきます。子供たちの小さな手をつないで歩きながら、ふと気づきました。分刻みの完璧なスケジュールなんて、本当はどうでもいいことだったのだと。この不規則な歩幅と、途中で足を止めて石ころを拾う時間こそが、今の私たちにとって一番正しい旅のリズムなのだと感じます。
5. トリプルルームの広いベッドに、一日中遊び尽くして疲れ果てた子供たちが同時にダイブした時の、ボフッという鈍い音。エアコンの低い一定の唸り声と、次第に深く、規則正しくなる寝息が部屋を満たしていきます。もがいて、笑って、時には泣いて。全力で「家族」というチームをやりきった後の、心地よい脱力感。洗い立てのシーツのパリッとした冷たさと、柔らかいクッションの感触が、火照った体にちょうどよく馴染んでいきました。
窓の外では、秋の月が静かに、けれど確かに私たちを見守っている。
- 仙台駅からの徒歩十三分。あえてゆっくり歩いて、街に漂う秋の匂いを探してみてください。
- トリプルルームは、家族全員が心地よい距離感で、ゆったりと寛ぐのに最適です。