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浴衣の袖をぎゅっと掴む、小さな手の温度

浴衣の袖をぎゅっと掴む、小さな手の温度

仙台の記憶を刻む、五つの調べ

ぺたぺた、とロビーのタイルに吸い付く濡れたサンダルの音。外の湿度に満ちた重たい空気を脱ぎ捨て、「つめたい!」とはしゃぐ次男の歓声が、冷房の効いた静寂に心地よく響く。足裏から伝わるひんやりとした温度が、旅の緊張をゆっくりとほどいていく。ここは、街という白い紙に、私たちという濃いインクが初めて落ちた、鮮やかな記憶の起点だった。

カチャカチャと、朝食会場で食器が触れ合う賑やかな音。窓から差し込む柔らかな朝光の中、次男が背伸びしてスムージーを飲み、口の周りに鮮やかなピンク色の口ひげを作っている。その滑稽な姿に、隣のテーブルの人が小さく微笑み、私たちもつられて笑い合う。そんな些細なやり取りが、心地よいリズムとなって朝の空気に溶け込み、お腹を満たすとともに、この街に馴染むための準備が整っていく。

さらさら、と衣擦れが立てる少し硬い綿の音。七夕祭りに向けて、長男が慣れない浴衣をぎこちなく着こなし、裾を気にしながら歩いている。コンフォートホテル仙台西口から駅までのわずか3分の道のり、途中で漂ってくる牛タンの香ばしい匂いに、家族の歩幅が自然と揃っていく。完璧な行進ではなく、誰かが遅れ、誰かが追い越す。その不揃いな足音こそが、今の私たちにとって一番心地よいテンポなのだろう。

しゅーっ、と部屋のエアコンが静かに空気を入れ替える音。外の喧騒を脱ぎ捨てて戻ってきた部屋で、サータ社製ベッドに家族四人が一度に飛び込む。「ふわふわだ!」という歓喜の声とともに、マットレスが私たちの体重を深く、柔らかく受け止める。誰がどこに寝るかで小さな言い争いが始まるけれど、その騒がしささえも、部屋の静寂にゆっくりと吸収され、空白の空間が家族の体温で満たされていく。

遠くで、ドン、と低く響く花火の音。消灯した部屋の暗闇の中で、耳だけが外の世界と繋がっている。窓の外に広がる仙台の夜に、私たちの記憶がインクのようにじわりと滲み出し、どこまでが自分たちで、どこからがこの街なのか、境界線が曖昧になっていく。その心地よい喪失感こそが、旅という名の化学反応なのだろう。私たちはただ、この街の一部としてそこに在ることを許されていた。

重なり合う四人の静かな寝息が、心地よい闇に溶けていった。

  • 仙台駅から徒歩3分という好立地。子供が疲れる前にチェックインし、一度ベッドで心身をリセットするのがおすすめです。
  • 朝食のスムージーは必食。お子様と一緒に、口ひげができるまで遊びながら味わう時間が最高の思い出になります。