← 戻る Hyatt Regency Naha, Okinawa

半分こにしたドーナツが冷めるまで

黄金色の朝と、テーブルに広がった小さな湖

足の裏に触れるタイルのひんやりとした感触が、那覇での一日の始まりを告げていた。Hyatt Regency Naha, Okinawaのレストランに足を踏み入れると、焼きたてのクロワッサンの香ばしい匂いと、カトラリーが触れ合う軽やかな金属音が心地よく混ざり合っている。上の子は「絶対、青いお皿がいい!」と譲らず、下の子はパンケーキにシロップをかけすぎて、テーブルの上に小さな黄金色の湖を作っていた。私はそれを眺めながら、ゆっくりと冷めていくコーヒーを啜る。家族で旅をするということは、個々の不揃いなリズムが激しく衝突し合うことだ。誰かが準備を終えても、誰かが靴下を片方失くしている。けれど、その時間的なラグこそが旅の醍醐味なのだと思う。子供たちの無邪気な笑い声が響き、こぼれたオレンジジュースが指先にねっとりと残る。その不自由さが、不思議と心地よかった。窓から差し込む柔らかな光が、子供たちの明るい茶色の髪を透かし、胸の奥に温かな灯がともる。完璧な静寂よりも、こういう雑多なノイズの中にいるほうが、自分がこの家族の一員として「ここにいていい」と思えるからだ。

喧騒の路地裏で分かち合った、揚げ菓子の素朴な熱

ホテルから国際通りへ歩き出す。十二月の那覇の空気はしっとりと湿り気を帯び、どこか懐かしい潮の香りがした。行き交う人々の賑やかな話し声、遠くで鳴る車のクラクション、そして店先から流れる三線の切ない音色。それらが幾重にも重なり、街全体がひとつの大きな楽器のように共鳴している。下の子が不意に「お腹すいたぁ」と私の裾をぎゅっと引っ張った。私たちは路上の店で、揚げたてのサタアンダギーを買った。外側はゴツゴツとしていて、噛むたびに「サクッ」という心地よい音が耳に届く。中の生地は驚くほどしっとりと柔らかく、濃厚な甘い香りが鼻を抜けた。上の子が「半分こしよう」と、不器用に半分に割ってくれた。その断面から立ち上る白い湯気を見つめながら、私たちはただゆっくりと歩いた。観光地の喧騒の中にありながら、私たち家族だけの小さな円がそこにある感覚。予定していたスケジュールは、道端の石ころに心を奪われた子供たちのせいでどんどん後ろにずれていく。けれど、それでいい。目的地に早く着くことよりも、その途中で見つけた「意味のないもの」に心を奪われる時間の方が、ずっと贅沢なのだ。指先に残った油の感触と、口の中に広がる素朴な甘さ。それが、この街の体温のように感じられた。

真夜中の密やかな宴と、深い眠りの繭

夜、ファミリールームに戻ると、窓の外では那覇の街灯りが静かに点滅していた。子供たちは疲れ果て、ベッドの中で小さく丸くなっている。上の子が寝言で何かを呟き、下の子は私の腕をぎゅっと握ったまま深い眠りに落ちていた。彼らが寝静まった後、私たちはコンビニで買い込んだアイスや地元の菓子を、小さなテーブルに並べた。深夜の部屋に流れる、低く一定した空調の唸り。それが心地よいBGMとなり、私たちは声を潜めて、今日あった出来事を話し合った。「あの葉っぱを食べようとした時は本当に焦ったよね」と笑い合い、首里城まで歩いた時に上の子が「もう無理!」と地面に大の字に寝転んだ光景を思い出しては、肩を震わせる。ガイドブックには載らない、泥臭くて滑稽な瞬間こそが、いつか一番愛おしく思い出す記憶になる。Hyatt Regency Naha, Okinawaのベッドに潜り込むと、リネンのパリッとした清潔な質感と、掛け布団の心地よい重みが全身を包み込んだ。その重さは、まるで大きな繭に包まれているような、あるいは世界から切り離されて守られているような安心感だった。明日になればまた、不揃いなリズムの戦いが始まる。でも、この静寂があるから、また明日も笑っていられる。暗い部屋の中で、遠くの車の走行音がかすかに聞こえ、それがゆっくりと遠ざかっていくまでの時間を、ただ静かに味わっていた。

窓の外で、那覇の夜が静かに呼吸をしていた。

  • 国際通りでサタアンダギーを買い、あえて目的地を決めずに路地裏を子供と一緒に散策すること
  • ホテルの部屋で、夜風に当たりながら地元のコンビニスイーツを家族で分け合う贅沢な時間