← 戻る BEB5沖縄瀬良垣 by 星野リゾート

深夜、乾燥機の回る音だけが部屋に満ちていた

深夜、乾燥機の回る音だけが部屋に満ちていた

指先に触れたドアノブの冷たさが、外の湿った熱気との境界線だった。BEB5沖縄瀬良垣 by 星野リゾートの扉を開けると、そこにはホテルというよりは、誰かが使い古した心地よいアパートのような、親密で緩やかな気配が漂っている。私たちが泊まるゆんたくスイートは、ベッドからキッチンまで、ゆっくりと数歩歩く距離がある。そのわずかな空白が、今の私たちにはちょうどいい。私たちはまだ、お互いの心地よい距離を測りかねているところだったから。部屋の隅では、洗濯機が低い振動を立てて回っている。濡れたタオルが壁に当たる鈍い音が、一定のリズムで刻まれていた。その単調な音を聞いていると、ここが単に一夜を過ごす場所ではなく、一時的に二人で「暮らす」ための実験場であるという気がしてくる。「ねえ、このボタンでいいのかな」と君が小さく呟き、私は「たぶん、そうだと思う」と曖昧に答える。洗濯機の操作方法が分からず、二人で説明書を覗き込んでいたとき、君がふっと小さく笑った。その笑い声が、部屋の静寂に溶けていく瞬間、心の中に張り詰めていた見えない糸がふわりと緩んだのが分かった。9月の恩納村の夜は、空気が濃い。窓を開けると、潮の香りと共に、夜の熱気が肌にまとわりついてくる。私たちはそのまま、31年中楽しめる屋外プールへと向かった。水面に触れた瞬間、体温がさらりと奪われていく感覚。深い青色の水の中で、私たちは言葉を交わさず、ただ隣に浮いていた。水の中で手と手が触れそうになって、けれど触れない。そのわずかな隙間に、今の私たちの不確かで、けれど愛おしい関係性がそのまま現れているように感じられた。プールサイドに上がると、遠くで秋祭りの準備をしているのか、微かに太鼓のような音が風に乗って聞こえてきた。もしかすると、それは私の耳が作り出した幻想かもしれない。近くで買ったサーターアンダギーを分け合った。指先に付いたざらついた砂糖の感触と、口の中に広がる揚げたての油の香ばしさ。甘さが少し強すぎて、私たちは同時に顔を見合わせて笑った。その瞬間だけは、距離なんてどうでもいいと思えた。庭に出ると、月明かりに照らされたすすきが、波のように静かに揺れていた。風が吹くたびに、カサカサと乾いた音が重なり合う。その音は、誰にも聞こえない秘密の会話のように聞こえた。月を眺めながら、私たちはどちらからともなく肩を寄せ合った。君の肩から伝わる体温が、心地よくて、少しだけ切ない。完璧な答えなんて、どこにもないのかもしれない。けれど、この不確かなリズムのままでいいという気がした。部屋に戻ると、洗濯機はもう止まっていて、乾燥したタオルの温かい匂いが部屋いっぱいに広がっていた。その柔らかな温もりに包まれながら、私たちは深い眠りに落ちていった。明日になればまた、少しだけ距離が変わっているかもしれない。それでも、この場所で共有した静かな振動と、夜の水の冷たさは、私たちの体の中に、消えない記憶として刻まれているはずだ。月光に照らされた白いタオルの山が、静かに夜に溶けていた。

  • 1324hまったりラウンジで、あえて明かりを消し、波の音だけに耳を澄ませる贅沢な時間を。
  • 客室のキッチンで地元の市場で買った色鮮やかな果物を切り分け、ゆっくりと味わってほしい。