← 戻る Beach Resorts Hotel KALAKAUA/ビーチリゾーツ ホテル カラカウア

午前三時のコンビニ袋と、誰かの笑い声

午前三時のコンビニ袋と、誰かの笑い声

「ここ、本当にホテルなの?」

「ちょっと待って。目印がセブンイレブンって、それもうただのコンビニ休憩でしょ!」誰かが呆れたように笑い、車内に爆笑が巻き起こる。助手席から身を乗り出した友人が、指をさして叫んだ。「だって見てよ、本当にセブンの裏側じゃん! 誰がこんなところにリゾートを作るんだよ」
「いいじゃん、最高に気楽で。っていうか、ナビを読み間違えたのは君でしょ」
「あ、それ私のせいじゃないから! 誰が『右に曲がれ』って言ったの?」
車内は不毛な議論と甘い芳香剤の香りに包まれ、心地よい喧騒が旅の緊張をゆっくりと溶かしていく。そんな、くだらない、けれど愛おしい時間だった。

喧騒を濾過する、アルミ色の隠れ家

車を降りると、2月の恩納村の空気は、しっとりと湿り気を帯びた冷たさで肌を撫でた。国道58号線を走る車の走行音が遠くで一定のリズムを刻んでいるが、ビーチリゾーツ ホテル カラカウア / Beach Resorts Hotel KALAKAUA の敷地へ一歩踏み入れた瞬間、その喧騒はふっと、深い水に溶けるように消えていった。まるで世界に高性能なフィルターが設置されているかのような静寂だ。国道58号線の喧騒と、東シナ海の静寂が同居するこの不思議な場所には、リゾートホテルでありながら、どこかキャンプのような野心的な自由さが漂っている。

私たちが選んだのは、アメリカ製のトレーラーハウスだった。ドアを開けた瞬間、かすかに金属的な、けれどどこか懐かしい旅の香りが鼻をくすぐる。壁に触れると、指先にひんやりとしたアルミの質感が伝わってきた。しかし、室内の空気は適度に温められており、その温度差が、ここが「外」ではなく、私たちだけの「内側」であることを教えてくれる。アルミの壁に反射する夕暮れの光が、部屋の中を淡い金色に染め上げていた。

天井が高く、空間が縦に伸びているおかげで、4人でいても息苦しさはなかった。むしろ、適度な余白があることで、お互いの存在が心地よく配置されていると感じる。私たちの関係は、きっと表面張力のようなものだ。それぞれが独立した雫として存在しながら、ある一定の距離で、目に見えない力で繋ぎ止められている。近づきすぎれば混ざり合って個性を失い、離れすぎれば孤独になる。けれど、このトレーラーハウスという密度の高い空間に身を寄せ合っていると、その表面張力がゆっくりと緩み、お互いの境界線が曖昧に浸透していくのがわかった。

ふと気づくと、私はコンタクトレンズを入れ忘れていた。だから、窓の外に広がる椰子の木が、巨大なブロッコリーのようにぼやけて見えたけれど、それでいいと思った。はっきり見えすぎる世界よりも、輪郭が溶け出した景色の方が、今の私たちの気分に合っている。裸足で踏んだ床の、少しだけざらついた感触。ベッドに体を投げ出したとき、シーツが肌に吸い付く心地よい重み。深夜、隣の部屋から漏れてくる誰かの笑い声が、遠くの波音と混ざり合って、一つの心地よい音楽のように耳に届いた。

溶け出した境界線と、夜の独白

「なあ、ぶっちゃけ、今の仕事続けてていいのかな」
深夜2時。間接照明がオレンジ色の柔らかな光を落としている。昼間の賑やかさは消え、声のトーンは低くなり、言葉の端々に本音が混じり始める。
「どうだろうね。正解なんて、たぶんどこにもないのかもしれないけど」
「そういう適当な答えが、今の私には一番心地いいわ」
誰かが小さく笑い、地元の飲み物を一口飲む。氷がグラスに当たるカチッという音が、静寂の中で鋭く響いた。
「不安っていうのは、きっと方向を示すコンパスみたいなものだと思うんだ」
私がそう言うと、友人は「ユウはやっぱりそういうところがあるよね」と、呆れたように、けれど優しく笑った。

窓の外では、東シナ海から吹く風が、ゆっくりと椰子の葉を揺らしていた。

  • 国道58号線沿いのセブンイレブンを拠点に、気ままに周辺のビーチを散歩してほしい
  • トレーラーハウスの壁に耳を当てて、外の世界と内の静寂の境界線を感じてみてほしい