記憶に刻まれた、那覇の五つの音
ぺたぺた、とアスファルトを叩く小さな足音。波の上ビーチへ向かう道すがら、次男のサンダルが何度も脱げていた。直そうとするたびに泣きそうになる彼を見て、私たちはふっと笑い、そのまま裸足で歩くことにした。3月の那覇の地面は、陽光を吸い込んで驚くほど温かく、足裏から心地よい熱が伝わってくる。正解の歩き方なんてどうでもいい。ただ一緒に、潮の香りが濃くなる方へ進めばいいのだと、繋いだ手の小さな温もりが教えてくれた。
ブーンという、部屋の電子レンジが回る低い振動音。子どもたちがようやく深い眠りに落ちた深夜、私たちは地元のコンビニで買ったお惣菜を温めていた。ビジネスホテル特有の、機能的で少しだけ無機質な白い空間が、この瞬間だけは誰にも邪魔されない家族だけの聖域になる。立ち上る湯気が、旅の疲れで凝り固まった肩の力をゆっくりと解きほぐし、静寂の中に心地よい充足感が満ちていった。
ギィ、とベッドのバネが小さく鳴る音。26平米のツインルームに、大人二人と子ども二人が無理やり潜り込んだとき、誰の足がどこにあるのか分からないまま、心地よい圧迫感に包まれた。洗い立てのシーツの清潔な香りと、混ざり合う家族の体温。私たちはこうして物理的にぶつかり合い、互いの鼓動を感じることで、ようやく一つのチームになれるのかもしれない。重なり合った呼吸の音が、夜の静寂に穏やかなリズムを刻んでいた。
窓を少し開けたときに入り込んできた、遠い波の音。ホテルリブマックス那覇波の上Ⅱからビーチまでは、わずか徒歩5分。その短い距離があるからこそ、部屋の中で聞く海の声は、どこか遠い記憶を呼び起こす心地よいノイズになる。薄明かりの部屋で、上の子が「海が呼んでるよ」と小さく呟いた。その声に導かれるように、私たちは明日もまた、あの白い砂浜へ行こうと心に決めた。
ガサガサと、国際通りで買ったお菓子袋を開ける音。ルールを破って、寝る前にこっそり分かち合うチョコの味は、人生で一番贅沢な味がした。「内緒だよ」と囁く私の声に、子どもたちの瞳が期待でキラキラと輝く。大人が少しだけ悪戯に加担する、そんな大して意味のない、けれどかけがえのないやり取りこそが、この旅の本当の目的だったのかもしれない。
カーテンの隙間に、まだ潮の香りがかすかに残っている気がする。
- 朝7時、空気がまだひんやりしているうちに波の上ビーチまで散歩して、誰よりも早く波打ち際を歩いてみてください。
- 部屋の電子レンジを活用して、地元の市場で買った不思議な名前のスイーツを温めて、家族だけの深夜パーティーを開くのがおすすめです。