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水底でだけ、呼吸が重なった気がした

水底でだけ、呼吸が重なった気がした

もし、あなたが今、この部屋を予約しようか迷っているのなら。それはきっと、誰かと一緒にいたいけれど、同時に一人でいたいという、矛盾した気持ちを抱えているからかもしれません。八月の那覇は、肌にまとわりつくような重い湿気と、路地裏からどこからか聞こえてくる三線の切ない音色で、少しだけ息苦しい。そんな、心まで汗ばむような午後のあなたへ、この手紙を書いています。今のあなたに必要なのは、目的地への地図ではなく、ただ静かに呼吸を整えられる場所ではないでしょうか。

瑠璃色の静寂に溶け、街の灯を宝石に変えて

盆踊りの太鼓の音がまだ耳の奥で微かに震えていて、心地よい疲労感が足首に溜まっていた。外の熱気に当てられて火照った肌に、ホテルの冷たいタイルの感触が触れたとき、ふっと肩の力が抜けたのを覚えています。ホテルアクアチッタナハのシースループールに身を沈めると、そこは喧騒から完全に切り離された、濃い青の静寂に包まれた世界でした。水面の下に広がる那覇の夜景は、まるで誰かが夜空からぶちまけた宝石のように、ぼんやりと、けれど鮮やかに揺れている。 「ねえ、ここだけ時間が止まっているみたい」 どちらからともなく漏れた呟きに、私たちはただ頷き、水中で指先だけを絡ませました。水圧が耳を塞ぎ、外界の音が遠のいていく。けれど、その代わりに、相手の心拍が指先を通じて伝わってくるような錯覚に陥る。言葉で「好きだ」とか「心地いい」と言うのは、どこか照れくさくて、今の私たちには少し早すぎる。でも、この青い重力の中であれば、ただ呼吸を合わせるだけで十分だった。水面に浮かぶ小さな泡がゆっくりと消えていくのを眺めながら、私たちはただ、同じ方向を向いて漂っていた。それは、答えを出すことよりもずっと大切な、心地よい停滞だったのかもしれません。

ほどよい距離感と、焼きたてパンの香りに包まれて

深夜、専用ラウンジで啜った泡盛の、喉を通る瞬間の熱い感覚がまだ記憶にあります。琥珀色の液体がグラスの中で揺れるのを眺めながら、私たちはあえて深い話はせず、明日どこへ行くかという、なんてことのない会話を繰り返していました。ダブルルームの白いリネンに体を投げ出したとき、マットレスが私の身体の曲線を正確に受け止めてくれる感覚に、不意に涙が出そうになった。誰かに合わせることなく、ただ「自分」としてそこにいていいのだという、深い安心感。もしかすると、私たちはずっと、そんな場所を探していたのかもしれません。 翌朝、地中海の朝市をイメージしたブッフェで、焼きたてパンの香ばしい匂いと、淹れたてのコーヒーの苦い香りに包まれていたとき、あなたが私の皿に、少しだけ形が不格好なフルーツを乗せてくれました。「これ、美味しそうだよ」という小さな呟きに、なんだかとても救われた気がした。ふと気づくと、私はあなたに寄り添いすぎていたのかもしれません。けれど、あなたはそれを避けることなく、ただ静かに笑っていた。泊ふ頭まで歩く道すがら、潮風が髪を乱し、肌に塩の香りがまとわりついたけれど、誰も気にしていなかった。ただ、隣に誰かがいるという体温だけが、確かな情報としてそこにあった。

白いリネンに、夏の陽光がゆっくりと溶け出していく午後。

  • 慶良間諸島へ渡る船に乗る前に、ロビーで少しだけ長めに、二人の呼吸を整えてみてほしい。
  • ラウンジの泡盛を飲みながら、あえて「何も決めない時間」を30分だけ作ってみるのがおすすめ。