もし、あなたが今、予約サイトの画面を開いたまま、指を止めているのなら。もしかしたら、それは正解かもしれません。完璧な計画を立てるよりも、ふとした予感に従って、ただそこへ行ってみる。そんな不確かさが、旅を一番いい色に染めてくれる気がするから。あなたに、あの青い記憶を届けたくて、この手紙を書いています。
街の灯りが塩のように散らばる、あの青い場所
指先が触れたプールの縁は、ひんやりとしていて、少しだけ滑らかだった。ホテルアクアチッタナハのシースループールに身を委ねると、視界の端からゆっくりと、那覇の街の灯りが滲み始めてくる。まるで、白い紙に落とした深い青色のインクが、時間をかけてゆっくりと繊維の奥まで広がっていくみたいに。私たちは、空と街のちょうど真ん中に、心地よく宙吊りにされていた。水の中にいると、耳に届く音がすべて丸くなり、外界の喧騒が遠い記憶へと変わっていく。隣で泳ぐあなたの呼吸の音だけが、水面を叩く小さな波紋とともに、心地よいリズムとなって伝わってきた。私たちはあまり多くを語らなかったけれど、水中で指先が触れ合ったとき、言葉にするよりもずっと確かな体温が伝わった気がする。もしかすると、私たちはずっと、こういう静寂を分かち合いたかったのかもしれない。
ふとした瞬間に、私は格好よく水面に浮かんで見せようとして、不意に水を飲み込んで激しくむせてしまった。静寂は一瞬で壊れ、あなたは堪えきれない様子で小さく笑った。その笑い声が、水の中で心地よく響き、私の耳をくすぐる。完璧じゃないほうが、ずっといい。そんな当たり前のことが、この深い青の世界では、とても大切な真実のように感じられた。夜が深まるにつれ、プールの青は夜空の黒に溶け込み、どこまでが水で、どこからが夜なのか、その境界線が曖昧になっていく。私たちの関係も、もしかしたらそんなふうに、ゆっくりと、でも確実に、混ざり合っていくのかもしれない。答えを急がなくていい。ただ、この心地よい浮遊感に身を任せて、街の灯りがゆっくりと点滅するのを眺めていたかった。
潮風の匂いと、焼きたてのパンが運ぶ朝
目が覚めると、エグゼクティブルームの窓から差し込む光が、白いリネンの上をゆっくりと移動していた。ベッドから窓辺までの数歩、裸足で踏みしめたフローリングの温度がちょうどよくて、心地よい目覚めだった。高い場所にあるこの部屋は、外の喧騒が遠い記憶のように感じられ、世界に私たち二人だけが取り残されたような、贅沢な錯覚をくれる。朝食会場に漂う、焼きたてのパンの香ばしい匂いに誘われて席に着く。地中海の朝市をテーマにした色鮮やかな食卓の中で、私は沖縄のサーターアンダギーを一口かじった。指先に残るわずかな油分と、口いっぱいに広がる素朴な甘さ。その温度が、身体の芯までゆっくりと解かしていくのが分かった。あなたはコーヒーを飲みながら、「明日、どこへ行こうか」と小さく呟いた。その問いにすぐに答えを出さなくていい、という安心感が、ここにはあった。
チェックアウトの後、泊ふ頭旅客ターミナルまで歩いた。わずか2分ほどの短い道のりだけれど、そこには濃い潮風の匂いと、遠くで鳴るフェリーの汽笛、そしてディーゼルエンジンの低い振動が混ざり合っていた。私たちはわざとゆっくり歩いた。歩幅を合わせるということ。それは、相手の呼吸に自分のリズムを合わせていく、とても静かで、とても親密な作業だということに、改めて気づかされた。
Hotel Aqua Citta Nahaのラウンジで飲んだ泡盛の、少しだけ刺激的な香りがまだ記憶に残っている。あの心地よい酔いと、窓の外に広がっていた那覇の夜景。それらすべてが、今では一枚のポストカードのように、心の中に静かに定着している。私たちはまだ、お互いのことをすべて知っているわけではないけれど、それでいい。空白があるからこそ、そこに新しい記憶を書き込んでいけるのだと思う。
玄関に並んだ、少し砂がついた二人の靴。ある日の午後、あの部屋より。
- 朝7時、まだ街が眠っている時間に、泊ふ頭まで潮風を浴びながら散歩すること
- クラブラウンジの静寂の中で、泡盛をゆっくりと味わいながら、あえて未来の話をしないこと