← 戻る ホテルみゆきビーチ

裸足で畳に転がり、潮の香りを数える

波音と笑い声が織りなす、家族の記憶の断片

濡れた小さな足が白い珊瑚砂を叩く「パチャパチャ」という軽快な音。次男が「あ!魚いた!」と歓声を上げた瞬間、私たち大人は同時に足を止めた。ホテルみゆきビーチの目の前に広がるプライベートビーチという贅沢な境界線の中で、子供たちにとってこの海は、世界で一番広い遊び場なのだろう。突き抜けるような青い空と、肌にまとわりつく潮風の香りが、日常を遠くへ追いやってくれた。

和洋室の襖を閉める時の「スーッ」という乾いた音。外の9月の、肌にまとわりつくような熱気が遮断され、部屋の中のひんやりとした空気が一気に肌を撫でた瞬間、張り詰めていた肩の力がふっと抜けた。畳のい草の芳しい香りが鼻をくすぐり、裸足で踏みしめるその適度な弾力が、心地よく自分を地面に繋ぎ止めてくれる。子供たちが畳の上で大の字になって寝息を立て始めるまでの短い静寂が、親としての自分に「よく頑張ったね」と囁いてくれている気がした。

グラスの中で氷がぶつかり合う「カラン」という、透き通った音。バルコニーから見える海が、熟したマンゴーのように濃いオレンジ色に染まり、ゆっくりと水平線に溶けていく。隣で妻が小さくため息をつき、私たちは言葉を交わさずに、ただ光の粒子が夜に飲み込まれていく様子を眺めていた。エアコンの低い唸り声と、遠くで聞こえる波のささやき。賑やかな一日の終わりに訪れるこの贅沢な空白こそが、心に深い充足感を与えてくれた。

「ねえ、お月様ってどうしてあんなに大きいの?」という長女の、少し眠そうな問いかけ。部屋の明かりをすべて消すと、オーシャンビューの大きな窓がそのまま夜空を映し出す巨大なスクリーンに変わった。夜の海は底の見えない深い藍色で、その上に浮かぶ月が、水面に銀色の細く真っ直ぐな光の道を引いている。正解を教えることよりも、一緒に夜の深さに不思議がる時間の方がずっと価値があるということに、この静かな夜に気づかされた。

夕暮れの散歩道で耳にした、ススキが風に揺れる「サワサワ」という密やかな音。沖縄の9月はまだ夏が濃いけれど、風の端っこにだけ、かすかな秋の気配が混じっていた。子供たちの小さな、温かい手を引いて歩くとき、不揃いな歩幅が心地いい。誰かが転びそうになり、誰かが笑い、またゆっくりと歩き出す。そんな不完全で、けれど確かなリズムこそが、私たちの家族が奏でる唯一の、そして最高の曲なのだと感じた。

暗闇の中で、重なり合う五人の寝息だけが、心地よい波のように静かに響いていた。

  • 早朝6時、子供たちが起きる前に一人でビーチを歩き、世界に自分だけが取り残されたような静寂と波の音に浸ってほしい。
  • 和洋室の畳スペースに家族全員で隙間なく寝転び、天井を眺めながらとりとめもない話を交わす時間を。