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瞼の裏に焼き付いた、あの青い残像

瞼の裏に焼き付いた、あの青い残像

空腹という名の敗北を分かち合う夜

指先に触れる夜気は、しっとりと湿り気を帯びながらも、どこか心地よい冷たさを孕んでいた。二月の恩納村。それは、遠い記憶にある懐かしい温度のようで、私たちの心をふわりと解きほぐしていく。私たちはホテルに到着してから、ある種のおかしな賭けをしていた。誰が一番最後まで「お腹が空いていない」と強がれるかという、大人の余裕を競うくだらないゲームだ。しかし、結果は惨めなまでにあっけないものだった。チェックイン後、オーシャンビューツインルームに足を踏み入れた瞬間、シモンズ製ベッドのあまりの心地よさに誘われ、私たちは同時に深い眠りに落ちたのだ。目が覚めたときには外は深い闇に包まれ、静まり返った部屋に、三人の腹が同時に鳴るという、最悪に滑稽なシンフォニーが響き渡った。

誰が言い出したのか、私たちは吸い寄せられるように近くのコンビニへと向かった。サンダルがアスファルトを叩く乾いた音が、夜の静寂に心地よくリズムを刻む。住宅街を吹き抜ける風が、火照った頬を冷やし、潮の香りがふわりと鼻腔をくすぐった。買い込んだのは、地元の銘菓に、わざと温めすぎたコンビニ弁当、そして正体不明の沖縄限定ドリンク。ビニール袋がカサカサと鳴るたびに、私たちは互いの「敗北」を笑い合った。ベストウェスタン沖縄恩納ビーチのロビーを通り、エレベーターで部屋へ戻るまでの短い時間、私たちは誰よりも勝ち誇った顔をしていた。空腹に屈したことが、これほどまでに心地よい解放感をもたらすなんて。計画通りにいかないことこそが、この旅で一番贅沢な成功だったのかもしれない。

揚げパンの香りと、深夜の不器用な作戦会議

「ねえ、結局、日没に間に合わなかったね」
「誰が地図を読み間違えたか、もう一度白黒つけようか」
「やめてよ。今はこの揚げパンのサクサク感に集中させて」

ブラウンとホワイトでまとめられた清潔感のある室内は、深夜の淡い照明の下で、まるで深い海に潜む潜水艦のような密室感に包まれていた。私たちはベッドの上に直接コンビニ袋を広げ、行儀悪く座り込む。シモンズのマットレスが、私たちの体重に合わせてゆっくりと、深く沈み込む。その心地よい弾力に抗おうとして、誰かがバランスを崩し、飲み物が危うく絨毯にこぼれそうになった。あちこちで小さな悲鳴が上がり、また笑いが起きる。この旅の私たちは、本当に不器用で、救いようがないほどに自由だった。

「っていうか、あのビーチの青さ、誇張抜きで異常じゃなかった?」
「わかる。目を閉じても、まだあの色が網膜に残ってる感じ」
「それ、ただの疲労による残像じゃない?」

そんなくだらないツッコミを飛ばしながら、温かい弁当を口に運ぶ。口の中に広がる濃い味付けと、窓から忍び込む夜の冷たい空気のコントラストが、五感を鮮やかに刺激した。私たちは、昼間に達成できなかった「完璧な観光ルート」について、わざと冷めた口調で分析し合った。けれど、不思議と後悔はなかった。むしろ、迷い込んだ名もなき道で見た、亜熱帯植物の濃い緑や、不意に現れた小さな祠の方が、記憶に深く刻まれている。正解を求める旅なんて、退屈で仕方ない。私たちは、互いの失敗を肴にして、深夜の時間を贅沢に消費していった。会話の波が満ちては引き、笑い声が部屋を満たす。そのリズムが、心地よいBGMのように私たちの心を繋いでいた。

潮が引いた後の、青い静寂に身を任せて

ゴミ袋がまとめられ、部屋に再び静寂が戻ってくる。さっきまでの喧騒が嘘のように、空気が凪いだ。エアコンの低い唸り音だけが、私たちがここに存在していることを証明している。ふと顔を上げると、カーテンの隙間から、薄い青色の月光が差し込んでいた。白い壁に落ちたその光は、昼間に見た恩納村の海の色に似ている。あるいは、私の瞼の裏に焼き付いた、あの強烈なコバルトブルーの残像なのかもしれない。

ベッドからトイレまでの数歩。裸足で踏むタイルのひんやりとした温度が、心地よく意識を覚醒させる。私たちはもう、多くを語る必要はなかった。ただ、同じ空間で、同じ温度の空気を吸い、同じタイミングで深い欠伸をする。その共有された沈黙には、どんな丁寧な言葉よりも深い信頼が混じっている気がした。不足しているものがあるからこそ、人は誰かを求める。完璧じゃない旅だからこそ、私たちはこうして、不格好なまま隣にいられるのだ。

私たちは、ゆっくりと意識を深い眠りの底へと沈めていく。明日になれば、また誰かが地図を読み間違え、誰かが大げさに文句を言い、そして私たちはまた、予定外の景色に心を奪われるだろう。それでいい。むしろ、それがいい。瞼を閉じると、再びあの青い色が広がった。それは、この場所でしか出会えない、静かな光の記憶だった。

明日もきっと、私たちは最高に効率の悪い道を歩くはずだ。

  • 地元のコンビニで売っている、揚げたてのサーターアンダギー。深夜に食べる熱々のが正解。
  • 沖縄限定のさんぴん茶。深夜の作戦会議のお供に、あの独特の香りは欠かせない。