溶け合う紫と、騒がしい黄金色
(Aの記憶)
テラスに出た瞬間、視界が濃密な色彩に塗りつぶされた。空の色が、単なるオレンジから、名前も付けられないような深い紫へと、じわじわと溶け出していく。潮風が運ぶ湿った塩の香りと、肌を撫でる心地よい涼しさに、ふと「ここで時間が止まればいいのに」と願った。パレスインムーンビーチ / PALACE IN MOON BEACHの部屋はシンプルだが、だからこそ窓の外に広がるエメラルドグリーンの海が、静かに部屋の中まで侵食してくる。冷たいシーツに身を沈め、天井に反射する残光を眺めていた。あの時、世界には自分と、この静かな青しか存在していないような錯覚に陥った。
(Bの記憶)
「ねえ、日焼け止め塗り忘れたんだけど!」という叫び声で、静寂なんて一瞬で吹き飛んだ。誰が一番先に海に飛び込むかというくだらない賭けに興じ、結局は全員で大笑いしながらテラスで騒いでいた。洋室-ツインの部屋はいたってシンプルだったけれど、それがかえって心地よかった。散らばった荷物やコンビニのお菓子が、まるで自分たちの「秘密基地」のような安心感を与えてくれたからだ。夕日の美しさなんて二の次で、隣で顔を赤くして笑っているあいつの表情が、今でも一番鮮明に記憶に焼き付いている。
舌で味わう海と、耳で聴く贅沢
(Aの記憶)
ライブ感あふれるオープンキッチンから漂う香ばしい匂いに誘われ、地元の魚料理を堪能した。口に入れた瞬間、凝縮された海の塩気が舌の上で弾け、そこにシークヮーサーの鋭い酸味が鮮やかに重なる。素材の温度が絶妙で、沖縄の西海岸という土地の成分を直接身体に取り込んでいるような感覚だった。味覚が研ぎ澄まされ、旅の心地よい緊張感が心地よく喉の奥に心地よく残る。最後の一口を飲み込んだ後、口の中に広がったかすかな苦味が、この旅の儚さと贅沢さを同時に教えてくれた気がした。
(Bの記憶)
ビーチサイドのオープンテラスを吹き抜ける風の温度と、グラスの中で氷がカランと鳴る澄んだ音。正直、料理の内容よりも、そんな空間の「響き」に包まれていたことが記憶に強く残っている。レストランに流れるピアノの生演奏が波の音と混ざり合い、心地よいノイズとなって意識を溶かしていった。友達が何か熱く語っていたけれど、半分くらいは聞き流していたかもしれない。ただ、オレンジ色の照明に照らされたみんなの顔がとても柔らかく見えて、言葉にしなくても通じ合える安心感に満たされた夜だった。
私たちが唯一、同意したこと
私たちは旅の間ずっと、違う景色を観ていた。ある人は光の屈折に、ある人は誰かの笑い声に、またある人はただ静寂に耳を澄ませていた。それはまるで、真っ白な水彩紙の上に、それぞれが違う色のインクを落としたみたいだ。けれど、唯一全員が同意したのは、パレスインムーンビーチ / PALACE IN MOON BEACHから見えたあの青だけだ。あれは、どんなに言葉を尽くしても、結局は「青いね」としか言いようがない、圧倒的な青だった。その青に囲まれていたときだけは、私たちは完全に同じ時間を共有していたのだと思う。
裸足で踏んだタイルの冷たさと、遠くで聞こえる波の音だけが、今も指先に残っている。
- 3階のフロントへ向かう道中、グリーンカーテンの隙間から見える海を、あえてゆっくり観察してほしい。
- 部屋のシンプルさを楽しむために、あえて予定を詰め込まず、テラスでぼーっとする時間を1時間だけ作ること。