誰が夜食を提案したか、なんてどうでもいい
5月の新北は、空気が街全体を抱きしめているかのように粘り気が強く、肌にまとわりつく。濡れた靴下が指の間に不快にまとわりつく感触に耐えながら、私たちは宏匯廣場の喧騒の中を歩いていた。結局、全員がずぶ濡れになり、湿った風が容赦なく服の隙間に潜り込んでくる。肩にのしかかる湿気の重みは、まるで目に見えない濡れた毛布を羽織らされているようだった。そんな絶望的な湿気の中、コンビニとフードコートで買い込んだ袋を抱え、私たちは逃げるようにHyatt Place New Taipei City Xinzhuangへと向かった。ロビーに足を踏み入れた瞬間、冷たく乾いた空気が肌を撫で、ようやく皮膚が呼吸を始めた気がした。外の混沌とした雨の世界から切り離され、洗練された静寂に包まれる。チェックインを済ませて部屋に向かうエレベーターの中で、誰かが「結局、誰が一番濡れたか決め直そう」と笑っていた。指先に食い込むビニール袋の感触と、冷房で冷やされた肌のコントラスト。それが、この旅の本当の始まりだったのかもしれない。
揚げ物の香りと、答えの出ない夜の会話
「ねえ、本当にこの雨の中でホタルが見られると思ってたの?」
ベッドの上に広げた大量の夜食。揚げたての鶏肉の香ばしい匂いが、モダンで清潔な白いリネンにゆっくりと染み込んでいく。私はわざとらしく大きなため息をつき、結露して指先が冷たくなったお茶を一口飲んだ。
「まあ、期待してたのは私だけだったみたいだし。というか、そもそも5月の新北を甘く見すぎたよね」
「いいじゃん。そのおかげで、このホテルの広々としたベッドが天国に見えるんだから。見てよこのシーツの質感、滑らかすぎてもうここから出たくない」
私たちは、端午節の準備で街が少しずつ騒がしくなっていることや、母の日に何を贈るかという、答えの出ない議論を始めた。誰かが「百合の花を贈ればいいんじゃない?」と言い、別の誰かが「いや、実用的なものが一番」と反論する。そんな会話をしながら、口いっぱいにジューシーな鶏肉を詰め込む。外側はカリッと、中は驚くほどジューシーな肉汁が口いっぱいに広がる。ふと、私が優雅に食べようとした拍子に、揚げたての破片が真っ白なシーツの上にぽつんと飛び跳ねた。一瞬の静寂。そして、全員で同時に吹き出す。そんな、どうでもいい瞬間の積み重ねが、旅を旅たらしめる。Hyatt Place New Taipei City Xinzhuangの部屋は十分な広さがあったけれど、私たちはあえて狭いベッドの上に集まって、肩を寄せ合っていた。外の雨音は遠くで低く鳴り、室内の温度はちょうどよく、心地よい眠気がゆっくりと足元からせり上がってくるのがわかった。
胃袋が満たされた後の、透明な静寂
袋の中身が空になり、騒がしかった会話もふっと途切れた。残ったのは、空の容器が立てる小さな音と、エアコンが一定のリズムで吐き出す白い風だけ。先ほどまであんなに騒いでいたのが不思議なくらい、部屋の中には透明な静寂が満ちていた。裸足で踏んだタイルのひんやりとした温度が、火照った体に心地よい。窓の外に広がる新北の夜景は、雨に濡れて光が滲み、まるで回路基板のように規則正しく、けれどどこか曖昧に光っていた。孤独というものは、一人でいるときに感じるものではなく、誰かと一緒にいて、それでも埋まらない隙間に気づいたときに、静かに呼吸を始める臓器のようなものだと思っていたけれど。でも、今のこの静寂は、寂しさとは違う。心地よい空白。私たちは、言葉を交わさなくても、同じ周波数でこの夜を共有しているという安心感に包まれていた。ただ、そこに在るということ。それだけで十分だという気がした。湿った夜の重みは完全に消え、代わりに、柔らかいシーツと静かな呼吸だけが、私たちの輪郭を優しく縁取っていた。
窓の外、遠くの街灯が雨に濡れて、淡いオレンジ色に溶けていた。
- 宏匯廣場の地下で買える、熱々の台湾式フライドチキン。
- 深夜に飲む、コンビニの冷たい台湾茶。湿気で疲れた体に心地よい。