← 戻る 那須陽光ホテル

オレンジ色のソファで、答えの出ない話をしていた

オレンジ色のソファで、答えの出ない話をしていた

私たちの不格好な旅を静かに見守っていた5つの証人たち

オレンジ色のソファ:ざらりとしたファブリックの質感と、そこに溜まった心地よい体温。コーヒーの残り香が漂うこの場所は、誰が一番に遅刻したかという、結論の出ないくだらない審議の中心地だった。鮮やかな色彩が、私たちの幼稚な口論をすべて吸い込んでいた。豪華なホテルのしつらえを、ただの賑やかな「溜まり場」に変えてしまった、記憶の特等席。

キングサイズのベッド:最高級リネンのひんやりとした感触と、もこもことしたデュベの圧倒的な重み。130平米という広大な空間にありながら、無理やり3人で潜り込もうとした時の、あの絶望的なまでの狭さ。シーツが擦れる乾いた音と共に、もがく私たちに翻弄されてシワだらけになっていく様子は、まさに私たちの計画性のなさを象徴していた。

地元野菜のスープ:立ち上る白い湯気がメガネを白く塗りつぶし、視界が消えた瞬間に弾けた誰かの笑い声。地元の味噌が効いた、土の匂いがかすかに混ざった嘘のない味。それを啜りながら、「私たちも大人になれた気がするね」と誰かが呟いた直後、金属製のスプーンが床に落ちて高い音を立てた。温かさと、ちょっとした気まずさが混ざり合った、10月の夜の匂い。

大浴場の白い湯気:裸足で触れたタイルのひんやりとした温度から、芯まで解きほぐされるお湯の熱さへの急激な変化。肌にまとわりつく濃密な湯気に包まれ、境界線が曖昧になった空間で、誰からともなく人生の悩みを話し始めた。けれど結局、最後は「お腹空いたね」という単純な結論に辿り着く。ただそこに居合わせる心地よさに、身も心も委ねていた時間。

DVDプレーヤー:トレイが開くときの小さな機械音と、暗い部屋にぽつんと灯る冷ややかな青いライト。選び抜いた映画を一本も観ないまま、メニュー画面のBGMだけが3時間ほどループしていた。私たちの決定的な決断力のなさを、この機械だけは静かに、そして正確に記録していたはずだ。静寂を切り裂く電子音が、私たちの迷走をあざ笑っていたのかもしれない。

もしこの部屋の調度品たちが口をきけるとしたら

きっと、深い溜息をつきながらも、どこか楽しそうに笑うだろう。那須陽光ホテルという洗練された空間にとって、私たちはきっと、秋の静寂を乱す不意の突風のような存在だったのかもしれない。10月の那須の空気は、外に出れば頬を刺すように冷たいけれど、この部屋の中だけは、私たちの体温と止まらない会話で、少しだけ湿度が高かった気がする。

指先に触れるリネンの冷たさと、その後にやってくる体温の混ざり合い。ロイヤルスイートの広さは、大人の余裕というよりは、私たちの騒がしさを許容するための緩衝地帯だったのだろう。27ホールゴルフコースを散歩していたとき、私たちと同じくらい迷い込んだ顔をしたリスがいた。あいつにだけは、私たちの計画性のなさが伝わった気がして、なんだか親近感が湧いてしまった。完璧な空間の中で「完璧に不格好であること」が許される贅沢こそが、この旅の正体だったのだ。

靴を脱いだまま、窓の外に静かに横たわる那須連山の稜線を眺めていた。

  • 130平米のロイヤルスイートに気心の知れた友人を詰め込み、贅沢な空間を賑やかな笑い声で塗り替えてみて。
  • 地元の滋味深い料理に舌鼓を打った後、あえて計画を捨てて、10月の冷涼な高原の空気を吸いながら散歩を。