← 戻る ホテルJALシティ名古屋 錦

白いシーツに残った、小さな菓子の欠片

ロビーの自動ドアが開いた瞬間、ひんやりとした外気とともに、子どもたちのコートに染み付いた雨上がりの匂いがふわりと流れ込んできた。四月の名古屋は、期待と不安が心地よく混ざり合ったような、不思議な温度を孕んでいる気がする。

ホテルJALシティ名古屋 錦にチェックインし、プレミアクイーンの部屋のドアを開けたとき、まず目に飛び込んできたのは、窓から差し込む蜂蜜色の柔らかい光だった。ビジネスホテルという言葉から連想しがちな「効率」や「機能」という乾いた概念とは違う、どこか余裕のある静寂がそこには湛えられていた。ベッドから窓まで、子どもが三歩で駆け抜けられるほどの親密な距離感。その絶妙な余白が、旅の緊張をゆっくりとほどいていく。

家族での旅は、往々にして計画という名のレールから外れていく。誰かが靴を履くのに手間取り、誰かが急に歩みを止め、また誰かが見たこともない方向へ好奇心に突き動かされて走り出す。けれど、そんな不協和音さえも、このモダンでスマートな部屋という箱に入ると、心地よいリバーブのように響き、温かな記憶へと昇華されていく。ここは、都会の喧騒に守られた、私たち家族だけの小さな繭のような場所だった。

家族の記憶に刻まれた、五つの断片

シモンズ社製ベッドの深い沈み込み:身体を優しく包み込む密やかな弾力と、家族三人が無理やり潜り込んだ時の心地よい体温の重なり。一番下の子が「雲の上にいるみたい」と呟いたとき、部屋の空気がふわりと緩んだことに最初に気づいた。

海藻エキス入りの洗顔フォーム:指先に触れるぬるりとした絹のような質感と、都会の真ん中にいながら遠い海の記憶を呼び起こす静かな潮の香り。上の子が「お魚の匂いがする!」と笑いながら顔を洗っていた賑やかな風景に、一番に気づいたのは私だった。

アメニティバーの小さなボトル:プラスチックがカチリと鳴る乾いた音と、自分の好きなものを選べるという子どもにとっての重大なミッションに伴う緊張感。どれにしようか真剣に悩む息子の横顔を見て、旅の正解は些細な選択の積み重ねにあるのだと、息子がその喜びに気づく前に私が気づいた。

名古屋城へ歩く道すがらの春風:頬を撫でるひんやりとした空気と、歩くたびに靴底がアスファルトを叩く軽快なリズム。ふと見上げた空から、淡いピンク色の花びらが舞い降りてきたとき、一番に気づいて指を差したのは妻だった。

独立バスルームに満ちる白い湯気:レインシャワーから降り注ぐ温かな雨のような感触と、壁に反射して心地よく響く水しぶきの音。扉を閉めればそこは外の世界から切り離された温室のようで、子どもたちが一番にその解放感に歓声を上げた。

「またここに来ようね」と、眠りに落ちた子どもの小さな寝息が、静かな部屋に溶けていった。

  • 伏見駅からホテルまで、あえてゆっくり歩いて、街の呼吸と春の気配を感じてみるのがおすすめ。
  • 名古屋城へ向かうなら、地図を閉じて、風に舞う桜の花びらを追いかけて歩いてみてほしい。