← 戻る ニッコースタイル名古屋

パジャマのままで、夜の街を眺めていた

ロビーに足を踏み入れた瞬間、鼻腔をくすぐったのは深く焙煎された珈琲の香りと、空間を彩るアートフラワーの静かな気配だった。そして耳に飛び込んできたのは、低く心地よく響くベースライン。ジェネバのスピーカーが奏でる洗練された音色が、モダンな空間に心地よい奥行きを与えている。そこに、次男が「あ!大きいスピーカーだ!」と叫ぶ高い周波数が重なった。

大人のための静寂と、子供たちの賑やかさ。本来なら反発し合うはずの二つの音が、この場所では不思議と一つの楽曲のように馴染んでいる気がした。私たちは、家族という名の、決して調律されることのないオーケストラのようなものだ。誰かが走り出せば誰かが慌てて追いかけ、誰かが泣き出せば誰かがなだめる。そんな不揃いなリズムを抱えたまま、ニッコースタイル名古屋のドアを開けた。そこには、私たちの混沌を優しく包み込んでくれる、ちょうどいい温度の空間が広がっていた。

家族の輪郭をなぞった5つの記憶

2段ベッドの梯子:指先に伝わる冷たい金属の感触と、登るたびに小さく鳴るガタガタという振動。上の段を「僕だけの秘密基地」だと主張して、絶対に降りようとしなかった長男の誇らしげな顔。バンクルームという限られた空間が、子供にとっては無限に広がる宇宙に見えていたのかもしれない。(最初に気づいたのは、長男)

ジェネバスピーカーの低音:胸の奥にじんわりと伝わる、深く重い振動。騒がしい子供たちの声を消し去るのではなく、その喧騒さえも心地よいBGMの一部に変えてしまうような包容力。「このリズムに身を任せていれば、予定通りにいかない旅さえも正解になる気がする」と、ふと独りごちた。(最初に気づいたのは、父)

屋上テラスの春風:4月の名古屋の空気は、まだ少しだけ冷たくて、頬を刺す。でも、その冷たさがあるからこそ、家族で肩を寄せ合ったときの体温がはっきりと分かった。遠くに見える街の灯りが、夜空に宝石をぶちまけたみたいにキラキラしていて、次男がそれを指差して無邪気に笑っていた。(最初に気づいたのは、次男)

有松絞りの布の凹凸:指先でなぞると、不規則に盛り上がった布の独特な質感。滑らかではないけれど、どこか懐かしく安心する手触り。母がその模様をゆっくりと辿りながら、「この凸凹が、なんだか私たちの旅みたいだね」と小さく笑っていた。正解のない形をしていることが、こんなに心地いいなんて。(最初に気づいたのは、母)

小倉トーストの甘い香り:レストランに漂う、バターが溶ける香ばしさと小倉餡の濃厚な甘さが混ざり合った朝の匂い。口の周りを茶色く汚しながら、「おいしい!」と叫ぶ子供たちの弾けるような笑顔。完璧なマナーなんてどうでもいい。ただ、この温かさと甘さが、旅の疲れをゆっくりと溶かしてくれた。(最初に気づいたのは、家族全員)

ベッドの脇に、片方だけ脱ぎ捨てられた小さな靴下が、朝日の光に照らされていた。

  • 子供たちが自由に動けるバンクルームを予約して、あえて「秘密基地」としての時間を楽しむのがおすすめです。
  • 朝の静かな時間に、ホテルのこだわりである珈琲を飲みながら、子供たちが起きるまでの短い贅沢を味わってみてください。