← 戻る Nagoya Marriott Associa Hotel

エアコンの音と、小さな寝息の重なり

都市の空に溶け込んだ、家族5つの記憶

耳の奥に訪れた、ふわりとした圧迫感。名古屋駅のコンクリートが放つ、むせ返るような熱気と喧騒から逃れるように、名古屋マリオットアソシアホテルのエレベーターに乗り込んだ瞬間、世界は急激に静まり返った。加速とともに鼓膜が心地よく震え、意識がふわりと浮き上がる感覚。鏡に映った私たちは、汗ばんだシャツに、少しだけ疲れ切った顔をした、どこにでもある家族の姿だった。けれど、この上昇感こそが、日常のしがらみを地上に置いていくための静かな儀式のようで、不思議と心が軽くなっていく。「お耳がポンってなった!」と、一番に声を上げてはしゃいだのは、好奇心旺盛な次男だった。

糊のきいた浴衣の、少し硬い手触り。七夕の夜、家族で浴衣を纏うことにしたが、現実は甘くない。帯を締めようとするたびに、上の子が「苦しい、なんか変だよ」と不満を漏らし、次男は浴衣をパジャマだと思い込んで、ふかふかのカーペットの上を転がっている。それでも、ホテルの冷たい廊下を歩くとき、足首に触れる生地のひんやりとした質感と、どこか懐かしいお香のような上品な香りが、私たちを非日常の物語へと連れ出してくれた。帯の結び目が少しだけ歪んでいたことに気づき、大人の特権としてクスクスと笑い合ったのは、私と夫だった。

指先に触れる、冷たい窓ガラス。高層階の客室から見下ろす名古屋の街は、まるで誰かが宝石箱をひっくり返したかのように、オレンジ色の光が幾千も散らばっていた。外は35度を超える猛暑で、湿った空気が肌にまとわりついていたはずなのに、厚いガラス一枚隔てた向こう側の景色は、驚くほど静謐だ。指先でガラスに触れると、心地よい冷たさがじわりと伝わってくる。この高さまで来れば、さっきまであんなに激しく泣いていた次男の癇癪さえも、愛おしい小さな点のように思えてくる。この静寂に一番に気づき、「お星さまが近いね」と小さく呟いたのは、上の子だった。

赤味噌のスープから立ち上る、濃い湯気。朝食の時間、ホテル内のレストランで運ばれてきた名古屋モーニングの香りに、眠っていた感覚がゆっくりと呼び起こされる。スプーンですくった味噌汁の、少し塩辛くて深いコク。立ち上る湯気が眼鏡を白く曇らせ、視界がぼやけるけれど、その温もりがかえって深い安心感を与えてくれた。次男が初めて赤味噌を口にしたとき、眉をひそめて「しょっぱい!」と顔をしかめたが、その後は夢中でパンにバターを塗っていた。そんな何気ない朝の風景こそが、旅の中で一番記憶に残る贅沢な瞬間だったのかもしれない。味噌汁の温度に一番に反応して、「あったかーい」と頬を緩ませたのは、次男だった。

ピンと張った白いリネンの、清潔な重み。一日の終わりに、吸い込まれるようにベッドに倒れ込む。肌に触れるシーツのパリッとした質感と、身体を包み込むデュベの適度な重さが、張り詰めていた神経をゆっくりと解きほぐしていく。次男はいつの間にか、ホテルのバスローブをスーパーヒーローのマントにして走り回っていたが、最後には私の腕の中で、規則正しい寝息を立て始めていた。この真っ白な繭のような空間に身を任せていると、家族で過ごす時間の不完全さこそが、最高の贅沢なのだと感じる。この心地よさに一番に屈して、先に深い眠りに落ちていたのは、実は私だった。

窓の外に遠くの花火が咲き、部屋の中を淡い光が満たしていた。

  • 名古屋駅直結のため、小さなお子様連れでも移動のストレスなく、スムーズに客室へ辿り着けます。
  • レストランで味わう名古屋モーニングは、地元の文化に触れながら家族の時間をゆっくり過ごすのに最適です。