← 戻る 天然温泉ホテルリブマックスPREMIUM名古屋丸の内

指先が冷えて、誰かの肩に触れた瞬間

凍てつく風と、不器用な足取り

久屋大通駅の改札を出た瞬間、肺の奥まで凍りつくような鋭い空気が、暴力的なまでに舞い込んできた。二月の名古屋の風は、単に冷たいだけでなく、皮膚にねっとりと張り付くような湿り気を帯びている。誰かが「本当にここであってる?」と、凍えた指先でスマートフォンの地図を何度も回転させて見せ、別の誰かが「多分ね、なんとなくそう思う」と、根拠のない自信に満ちた声で答える。キャリーケースの硬いプラスチック製の車輪が、濡れたアスファルトを叩く乾いた音が、静まり返った街に不規則なリズムを刻んでいた。私たちは、誰が一番先に目的地に辿り着くかという、大人のすることとは思えない、どうでもいい賭けをしていた。指先はすでに感覚を失い、ポケットの中で互いの手を絡ませて無理やり温め合う。そんな、意味のない会話と、少しだけ不便な状況が、旅という非日常を際立たせて心地よい。空は低く、灰色がかった青色をしていて、今にも雪が降り出しそうな、けれど決して降らない、そんなもどかしい色をしていた。私たちは互いの肩がぶつかる距離で歩きながら、ただひたすらに、心まで温めてくれる場所を求めていた。

路地裏に咲く、桃色の迷路

ホテルへ向かう道すがら、ふと鼻腔をくすぐったのは、どこか懐かしく、けれど凛とした梅の香りだった。梅まつりの季節なのだろうか。誰かが「あ、いい匂い」と不意に足を止め、私たちは磁石に惹かれるように同時に同じ方向を見た。そこには、無機質な高層ビルと冷たいコンクリートの隙間で、ひっそりと、けれど誇らしげに咲く、淡い桃色の花があった。グーグルマップが冷徹に提示する最短ルートを、私たちはわざと無視することに決めた。路地裏で出会った小さな店で、節分の豆を売っているのを見つけて、私たちは足を止めた。誰が豆を投げる役になり、誰が追い出される役になるか。そのくだらない議論だけで、気づけば十分は消費していたと思う。道端で買った温かい缶コーヒーを、手のひらで転がしながら歩く。アルミ缶の熱が、じわじわと皮膚を通して心臓まで届く感覚。そんな効率の悪い、目的地を忘れたような時間が、旅というものの正体な気がする。誰かが「結局、誰が一番にホテルに着くか賭けてたよね」と笑い、私たちは同時に、もうそんなことはどうでもいいと感じていた。街の喧騒が遠のき、路地の静寂が私たちを包み込む。

湯気に溶ける、心の境界線

天然温泉ホテルリブマックスPREMIUM名古屋丸の内に足を踏み入れたとき、最初に意識したのは、外気との鮮やかな温度差だった。冷え切っていた皮膚が、じわりと緩んでいく。ラグジュアリーツインルームの扉を開けると、清潔なリネンの香りと共に、柔らかな照明が私たちを迎えた。まず誰がベッドの真ん中を占領するかという、静かだけれど激しい領土争いが始まる。もふもふとしたリネンの感触が、冷えた肌に心地よく馴染み、もつれ合う足と押し問答のような笑い声が部屋に満ちていく。

それから、この旅の目的地とも言える大浴場へ。お湯にゆっくりと身を沈めた瞬間、それはまるで、結晶化した濃い塩が、温かい水の中にゆっくりと溶け出していく過程に似ていた。今日一日、冷たい風に晒されて、鎧のように強張っていた肩の筋肉が、その境界線を失い、お湯と同化していく。視界に広がるのは、乳白色の濃い湯気。耳に届くのは、遠くで誰かが立てている小さな水音と、自分たちの静かな呼吸だけ。

「あー、生き返る」

誰かが呟いたその言葉が、水面に小さな波紋のように広がっていく。私たちは、普段の生活では口にしないような、少しだけ重みのある、けれど心地よい話を始めた。お湯の温度がちょうどよくて、心の中にある澱のようなものが、ゆっくりと、けれど確実に洗い流されていく。肌がしっとりと濡れ、指先まで血が巡る。サウナでじりじりと焼かれた後の水風呂の、あの心臓が跳ねるような衝撃。それから、再び湯船に戻ったときの、全身を包み込むような深い安堵感。裸足で踏んだタイルの、ひんやりとした、けれど清潔な温度が、足裏から脳まで突き抜ける。私たちは、ただそこに在ることを許されていた。

窓の外では、名古屋の夜が静かに、けれど確実に深まっていた。

  • 久屋大通公園を散歩して、テレビ塔の光が水面に反射する様子を眺めてみて。
  • 大浴場の後は、コンビニで買った冷たいアイスを、暖かい部屋でゆっくり食べるのが正解。