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湯気の中で、誰の笑い声か分からなくなった

湯気の中で、誰の笑い声か分からなくなった

「誰が一番にホテルに着くか」なんていう、大人のすることじゃない賭けをした。4月の空気はまだ刺すように冷たく、キャリーケースの車輪がアスファルトを叩く乾いた音が、急き立てるリズムのように街に響いていた。結果はどうだったと思う?地図を完璧に使いこなしていると豪語していたリーダーが、見事に一番遠回りをした。信じられないけれど、私たちは彼を心地よく笑いながら、春の風に吹かれてドーミーイン熊本に辿り着いた。



辛島町の路地裏で見つけた店で食べた馬刺し。舌の上に載せた瞬間、身のひんやりとした冷たさと、添えられた生姜の鋭い香りが鼻腔を突き抜けた。脂がゆっくりと体温で溶けていく感覚は、まるで長い冬が完全に終わり、街がゆっくりと目覚める瞬間の温度に似ている。私たちは互いの口元の汚れを指差してツッコミ合いながら、地元の濃密な味にどっぷりと浸かった。


「効率的なルートを組んだから」と胸を張っていた彼に、私たちは静かに問いかけた。目の前の景色が、さっき見た景色と全く同じである理由を。スマホの画面に張り付いた指先と、迷路のような道を延々と歩かされた私たちの疲れた足。誰のせいでもないけれど、このもどかしい不自由さこそが、後で最高の笑い話になるという予感がしていた。


熊本城の桜の下で撮った集合写真。不意に強い風が吹き抜け、誰かの口の中にひらひらと花びらが舞い込んだ。ちょうどシャッターを切った瞬間で、写真は台無し。けれど、口を半開きにして情けない顔をした友人の表情こそが、今回の旅で一番「正解」に近い、愛おしい一枚だったのかもしれない。


13階の天然温泉に身を沈めたとき、身体の輪郭がゆっくりと溶け出していくのが分かった。お湯の温度が心地よく、肌に触れる感覚はまるで厚手の重い毛布に包まれているみたいだった。地上の喧騒が遠のき、ただお湯が小さく揺れる音だけが耳に残る。ここでは、誰が正しくて誰が間違っていたかなんて、どうでもいいことのように感じられた。


露天風呂から見下ろした熊本の街は、精密な回路基板みたいに青白く光っていた。13階という高さが、私たちに心地よい距離感を与えてくれる。裸足で踏みしめたタイルのひんやりとした感触と、火照った頬を撫でる夜風の温度。その鮮やかなコントラストが、旅の緊張で張り詰めていた心をゆっくりと緩めてくれた。


深夜、無料の夜鳴きそばを啜りながら、私たちはまたくだらないことで言い合いを始めた。白い湯気の向こう側で、誰かがサウナで滑りそうになった話に花が咲く。醤油ベースのスープの香ばしい香りが狭い空間に充満して、胃袋が満たされると同時に、不思議な安心感が広がった。この時間があるから、私たちはまた明日も一緒に歩ける。


翌朝、ベッドのシーツの冷たさに身を縮めたとき、ふと昨日の喧騒が遠い記憶のように感じられた。窓の外では桜が静かに舞っていて、新しい生活への不安と期待が、春の風に混ざり合っている。完璧じゃない旅だったけれど、だからこそ、ドーミーイン熊本で過ごした時間が何よりも心地よかった。

枕元に、一枚だけ桜の花びらが落ちていた。

  • 13階の露天風呂で、街の灯りを眺めながらぼーっとすることを強くおすすめするよ
  • 深夜の夜鳴きそばは、友達とのくだらない会話に最高のスパイスになるから絶対食べて