那覇の春を奏でる、家族の記憶の五つの音
ガタガタと、少しだけリズムのずれた車輪がロビーの白いタイルを叩く音。貸出用のベビーカーに荷物を詰め込み、上の子は私の指をぎゅっと握り、下の子は前を指差して歓声を上げている。バラバラな方向を向いているはずなのに、不思議と一つの塊として移動しているこの感覚は、胸の奥に溜まった心地よい圧迫感に近い。那覇ビーチサイドホテルに足を踏み入れた瞬間、私たちは個々の旅人ではなく、一つの「チーム」になれた気がした。
スーッという、バルコニーのガラス戸が滑る乾いた音。開いた瞬間に流れ込んできたのは、三月の那覇が持つ、湿り気を帯びたぬるい風と、どこか懐かしい潮の香りだった。手すりの金属はまだ少し冷たくて、指先に心地よい緊張が走る。目の前に広がるシティービューは、誰かが丁寧に散りばめた宝石のように点在していて、それを眺めているだけで、肩に積もっていた見えない荷物がふっと軽くなるのがわかった。
ズズッという、沖縄そばを啜る賑やかな音。ホテル内のレストランでは、島豆腐の淡い白とチャンプルーの鮮やかな色彩がテーブルを彩っていた。「これ、お豆腐なのに不思議な味がする!」と上の子が眉をひそめながらも完食し、下の子がジューシーのご飯を頬張って口の周りを黄色く染めている。立ち上る出汁の温かな湯気と、子供たちの無邪気な笑い声が混ざり合い、心の中の凍っていた部分がゆっくりと溶かされていく。
サラサラと、小さな靴が白い砂を蹴る音。ホテルからほど近い波の上ビーチまで歩いたとき、子供たちは波打ち際で小さな貝殻を探し始めた。大人の歩幅で考えればほんの数分の距離だけれど、彼らにとっては未知の惑星を探索するような大冒険なのだろう。指先を伝わる潮風の粘り気と、突き抜けるような青い空。子供たちの高い笑い声が耳に届くたび、今のこの瞬間だけは、人生に何ひとつ欠けていないという確信に似た感情が胸を満たした。
カサリと、清潔なリネンのシーツが擦れる音。一日の終わりに、シングルルームのベッドに家族で無理やり潜り込む。狭いけれど、お互いの体温が直接伝わってくる、濃密で優しい距離感。窓の外では那覇の夜景が静かに呼吸し、室内の静寂が心地よい重みを持って降りてくる。心地よい疲労感とともに、誰かの規則正しい寝息が耳に届くとき、ここが今、世界で一番安全な場所なのだと感じる。
明日の朝は、もう少しだけ、ゆっくりと目覚めてもいい。
- 国際通りへ向かう道すがら、地元の小さなお店に寄り道して、子供と一緒に不思議な色の飴を探してみてください。
- 波の上ビーチで拾った一番小さな貝殻を、旅の終わりの思い出としてバルコニーの隅にそっと置いてみてください。