那覇の風と家族の記憶を刻む五つの音
ロビーに響くスーツケースの乾いた「カタカタ」という音。5月の那覇の、濡れたタオルのように肌にまとわりつく重い湿気と熱気を切り裂き、パパが少し焦った様子で荷物を引いている。この音は、外の世界での緊張という戦いが終わり、西鉄リゾートイン那覇という安全なベースキャンプに辿り着いた合図だった。
「見て!お花がきれい!」という、下の子の突き抜けるような高い声。外に咲き誇るバラや藤の鮮やかな色彩に心を奪われた瞬間の、純度の高い響きがロビーに舞う。大人が分刻みのスケジュール表に縛られていた時間を、子供の無邪気な視線が軽やかに塗り替えていく、心地よい脱線の時間だ。
客室に入った瞬間、耳の奥に低く一定に響き始めたエアコンの「コー」という作動音。洋風の洗練された空間に冷ややかな空気が満ち、火照った肌の温度がゆっくりと心地よい場所まで降りてくる。張り詰めていた肩の力が音もなく抜け、ここは誰にも邪魔されない家族だけの聖域なのだと、深い安堵感に包まれた。
ふかふかの厚いカーペットの上を、小さな足が駆け抜ける「ドスンドスン」という鈍い音。上の子が「ここは走っていいの?」と不安げに聞きながらも、結局は好奇心に負けて加速していく。パパがガイドマップをうまく畳めずに四角い塊にしたまま固まっているのを見て、子供たちが一斉に吹き出した笑い声が、部屋の隅々まで光のように広がっていく。
枕元のランプを消すときの、静寂に溶ける小さな「カチッ」という音。一日中、誰かの機嫌を伺い、誰かの歩幅に合わせて歩き続けた大人の時間が、ようやく自分自身へと還る瞬間だ。リネンのひんやりとした清潔な感触に包まれながら、今日の心地よい騒がしさが、温かな余韻となって胸の奥に溜まっていく。
明日の朝は、また不揃いな歩幅で、光の中を歩き出そう。
- 5月の那覇は日差しが強いため、子供用の帽子と冷たい飲み物を多めに用意して、熱中症対策を万全に。
- 西鉄リゾートイン那覇のロビーで、あえて予定を決めずに10分だけぼーっとする贅沢な時間をぜひ。