← 戻る ホテル日航アリビラ

白いサンダルの音が、波に溶けるまで

なぜ、家族という不協和音を連れて、この白い城を訪れるのか?

一月の沖縄の朝は、空気がひんやりと澄み渡り、深く呼吸をするたびに肺の奥まで浄化されるような心地がする。スーペリアオーシャンパティオツインのバルコニーに足を踏み出すと、手すりの金属が指先に冷たく触れ、そこから潮の香りがゆっくりと、けれど確実に流れ込んでくる。ホテル日航アリビラの白い壁は、冬の柔らかな光を反射して、目に優しい淡い真珠色に染まっていた。

子供たちが走り回り、誰かが飲み物をこぼし、緻密に立てたスケジュールは早々に崩れていく。けれど、このホテルのスペイン・コロニアル様式の建築は、そんな家族の「乱雑さ」を優しく包み込んでくれる大きな器のようだ。中庭を歩けば、子供たちの高い笑い声が白い壁に跳ね返り、心地よい残響となって耳に届く。それはまるで、計算されていない即興曲を聴いているような気分だ。静寂だけが贅沢なのではない。大切な誰かと一緒にいる時にだけ生まれる、この賑やかな不協和音こそが、旅の本当の輪郭を形作っている。誰かが不機嫌になっても、わがままを言っても、それを吸収してくれるだけの十分な余白がここにはある。私たちはただ、理想の親になろうとするのをやめ、一緒に風を感じるだけでいい。そんな、何の意味もないけれど至福の時間が、ここには静かに流れている。

子供たちの瞳には、どんな青い魔法が映っていたか?

子供にとっての世界は、大人が見落とすほど小さなディテールでできている。プールのほとりで、上の子が「ここは海の中にあるお城みたいだね」と小さく呟いた。深いブルーのプールと、眩いほど真っ白な建築のコントラストは、どこか現実離れしていて、迷い込んだ異世界のような錯覚を抱かせる。足首まで水に浸かったとき、その心地よい温度に、このまま時間が止まってしまえばいいのにと願ったのかもしれない。

ある午後、下の子がホテル指定の大きなバスローブを羽織り、それを勇者のマントに見立てて廊下を駆け抜けていた。「見てて!僕は騎士なんだよ!」と宣言したものの、サイズが大きすぎて足元がもつれ、そのままふかふかの絨毯の上にコロリと転がった。まるで大きな白い繭に包まれたみたいにもぞもぞと動けない様子に、家族全員が思わず吹き出した。そんな、取るに足らない、けれど誰にも教えたくないほど愛おしい瞬間が、この場所では自然と生まれてくる。

水面に反射した光が、子供の頬をキラキラと照らしていた。彼らが夢中で追いかけていたのは、水面に浮かぶ小さな気泡か、あるいは光の粒だったのだろうか。大人はつい「危ないよ」とか「そろそろ出よう」と言いたくなるけれど、ここではその言葉を飲み込んで、彼らの視線がどこに向かっているのかを一緒に眺めていたい。水しぶきが上がったとき、それが空中で一瞬だけダイヤモンドのように輝いた。その光景を、子供たちはきっと、大人になっても忘れないだろう。彼らにとっての旅とは、有名な観光地を巡ることではなく、こういう「名もなき発見」の積み重ねなのだと思う。

旅路の果てに、心に刻まれるものは何か?

旅の終わりが近づくと、部屋の中は心地よい乱雑さに包まれる。砂混じりのサンダル、使い古したビーチタオル、そしてニライビーチの波打ち際で子供たちが拾い集めた小さな貝殻たち。それらをひとつひとつ丁寧に荷物へ詰め込んでいるとき、ふと、この場所で過ごした時間の「重さ」を感じる。それは物理的な重さではなく、心にゆっくりと溜まった、温かい記憶の堆積のようなものだ。

最後に一度だけ、テラスから海を眺めた。一月の海は、夏のような激しさはないけれど、深く、静かな青を湛えている。水平線が空に溶け込んでいく様子を眺めていると、自分の中にあるもやもやとした感情が、ゆっくりと凪いでいくのがわかった。私たちは、何かを得るために旅をするのではなく、ただ自分たちを緩めるためにここに来たのかもしれない。正解のない問いを抱えたまま、ただ心地よい風に吹かれる。それだけで、十分だった。

車に乗り込み、ホテル日航アリビラの白い壁が遠ざかっていくとき、車内には心地よい疲れと、満足感に満ちた沈黙が流れていた。けれど、その沈黙は寂しいものではなく、共有した記憶という名の「残響」で満たされている。家に帰ってからも、ふとした瞬間に、あの白い壁に反射した光や、子供たちの笑い声が耳の奥で鳴り響くはずだ。不完全で、けれど温かかったあの時間は、これからも私たちの心の中で、静かに、けれど確かに響き続けるだろう。

裸足で踏んだタイルの、あの絶妙な温度を、私はきっと忘れない。

  • 子供が飽きないように、敷地内の小さな植物や石の形を一緒に探す「宝探しゲーム」を提案してみるのがおすすめ。
  • 早朝の静かな時間に、家族でバルコニーに出て、海の色がゆっくりと変わっていくのを10分間だけ眺めてほしい。