← 戻る パレスインムーンビーチ(旧ムーンビーチパレスホテル)

ポケットの中の小さな貝殻が鳴った

ポケットの中の小さな貝殻が鳴った

心に刻まれた、沖縄の五つの音色

1. 「パタパタ」という、小さすぎるビーチサンダルの音。下の子が三日月形のビーチへ向かって、弾むように全力で駆け出していく。真っ白な砂浜に足が触れた瞬間の、弾けるような歓声。「見て、パパ!海が笑ってるよ!」という無邪気な声が、心地よい潮風に乗って空へと溶けていく。足裏に伝わる砂のさらさらとした温もりと、視界いっぱいに広がる10月の柔らかな青。それは、旅への期待が足元から溢れ出している、純粋な喜びの音だった。

2. 「ふぅ」という、深く長い、大人のため息。パパがパレスインムーンビーチのひんやりとした壁に背中を預け、ふっと肩の力を抜いたとき。荷物の整理やスケジュール管理という、目に見えない戦いが一旦終わったことを知らせる、静かな安堵のサイン。午後の柔らかな光がロビーに差し込み、張り詰めていた心の結び目が、ゆっくりとほどけていく。日常という重いコートを脱ぎ捨てたときだけに出る、心地よい脱力感だった。

3. 「ザザーン」という、一定のリズムで繰り返される波の音。ビーチサイドのオープンテラスに身を任せていると、誰が何を言っても心地よくかき消される。10月の穏やかな海が、私たちの不揃いな歩幅を優しく包み込んでくれる、大きな揺りかごのような響き。肌をなでる風は少しだけ涼しく、濃い塩の香りが記憶の奥底にある懐かしさを呼び覚ます。ターコイズブルーの海面が太陽に照らされてキラキラと輝き、視覚と聴覚が心地よく共鳴していた。

4. 「カサッ」と、ゆっくりとページがめくられる音。洋室-トリプルの広いベッドの上で、上の子が遠い街の紅葉について書かれた本を読んでいる。外の賑やかさとは完全に切り離された、冷房の効いた部屋の中だけに漂う小さな静寂。シーツのパリッとした清潔な感触と、古い紙の乾いた匂い。ふと隣を見ると、本に没頭する子供の横顔があり、親としての充足感が静かに胸に満ちる。その静けさこそが、この旅で一番の贅沢だったのかもしれない。

5. 「カチャカチャ」という、賑やかで心地よい食器の音。レストランのブッフェで、みんながお気に入りの料理を皿に盛り付けている。ライブ感あふれるオープンキッチンの活気と、南国特有の芳醇な果実の香りが空間を満たしていた。盛り付けられた料理の横に添えられた小さなハロウィンの飾りに、子供たちが不思議そうに目を輝かせる。言葉にしなくても伝わる、家族というチームとしての温かな団結力。皿の上に並ぶ色彩豊かな料理たちが、旅の思い出をさらに鮮やかに彩っていく。

チェックアウトのとき、子供のポケットから小さな貝殻が転がり落ちて、澄んだ音を立てた。

  • 3階のフロントへ向かう途中の緑のカーテンの下で、一度立ち止まって深く呼吸してほしい。
  • 三日月形のビーチで、あえて何もせず、波が引くのをじっと待つ贅沢な時間を。