← 戻る ザ・ムーンビーチ ミュージアムリゾート

裸足で踏んだタイルの冷たさ

裸足で踏んだタイルの冷たさ

足の指の間に、きめ細かく白い砂がさらさらと入り込む。下の子が「見て!魚がいた!」と歓声を上げて指差した先には、ただの枯れた海藻がゆらゆらと漂っていただけだった。けれど、その子の瞳の中には確かに銀色の光が踊っていて、私はそれを否定できずに一緒に海藻を眺めた。服の裾はしっとりと湿り、潮の香りが皮膚にまとわりつく。おしゃれなリゾートウェアを着てきたけれど、結局は砂だらけのTシャツがこの旅の正装になる。そんな乱雑さが、心地よい解放感となって心に染み渡った。


冷たいリネンの感触が、火照った肌に吸い付く。Club Luxuryの大きなベッドに深く体を沈めると、自分の輪郭がゆっくりと溶けていく感覚があった。テラスのドアをそっと開けると、四月の沖縄の風が、わずかな湿り気と南国の花の香りを帯びて部屋に流れ込んでくる。上の子がまだ深い眠りについている午前七時。コーヒーメーカーが低く唸る音だけが響く静謐な空間で、私はただ、自分がここにいていいのだという深い安心感に包まれていた。贅沢とは、豪華な設備のことではなく、誰にも邪魔されない数分間の静寂のことなのかもしれない。
波の音が、部屋の隅々まで深く染み渡っている。ザ・ムーンビーチ ミュージアムリゾートの夜は、音が幾重にも層になって押し寄せてくる。遠くで絶え間なく聞こえる潮騒と、隣のベッドで上の子が「僕の方がタオルを多く使った」と主張して言い争う、小さく高い声。その不協和音が、不思議と心地よいリズムとなって耳に届く。静寂とは、音がまったくないことではなく、愛おしいノイズに囲まれている状態を指すのだろう。私はそっと目を閉じ、家族という名の不規則な周波数に耳を澄ませた。
口の中で弾ける、完熟したパイナップルの濃厚な甘み。朝食のビュッフェで、下の子が頬いっぱいに果物を詰め込んで、幸せそうに目を細めている。地元の食材をふんだんに使った料理の、少しだけ濃いめの味付けが、旅に来たことを身体の芯から教え込んでくれる。冷たいオレンジジュースが喉を通る時の、あの鋭く爽やかな感覚。お互いの皿に「これ美味しいよ」と料理を分け合う。そんな単純なやり取りが、どんな豪華なディナーよりも心を満たしてくれる気がした。
コンクリートの壁に、鋭い角度で光が切り取られている。このホテルが掲げる「光と風の建築」という思想は、時間によって空間の表情を鮮やかに塗り替えていく。午後四時、廊下に長く伸びる影の中を、子供たちが追いかけっこをしながら駆け抜けていく。光の粒が宙に舞い、影が彼らの小さな足元を追い越していく。空間そのものが呼吸しているような感覚。私たちはただそこにいるだけで、風景の一部に溶け込んでいく。正解のない問いに答えを出すのではなく、ただ光の移ろいを眺める贅沢な時間があった。
ざらりとした土の質感。ロビーに置かれた小さなシーサーの頭を、下の子がねっとりとした手で触っていた。その子は忽然、シーサーの顔を真似して口を大きく開け、「ガオー!」と元気いっぱいに叫んだ。周りの大人が少しだけ驚いた顔をしたけれど、私は思わず吹き出した。完璧なマナーなんて、この場所では必要ないのかもしれない。陶器のひんやりとした冷たさと、子供の熱い体温。その小さなコントラストが、この旅の中で一番鮮やかな記憶として刻まれた。
空が、深い紫から濃い青へと溶けていく。プライベートビーチに座り、家族四人で同じ方向を眺めていた。誰一人として言葉を発していなかったけれど、肩が触れ合う距離に誰かがいるということが、何よりも確かな安心感として伝わってきた。足りないものがあるからこそ、今ここにあるものが愛おしくなる。私たちは、お互いの欠落を埋め合うのではなく、そのままの形で隣に座っていた。寄せては返す波の音だけが、私たちの間の空白を優しく、そして深く埋めてくれていた。

小さな手が、私の指をぎゅっと握りしめた。

  • 子供と一緒に、波打ち際で「一番変な形の貝殻」を探して歩く時間を作ってみてください。
  • ミュージアムエリアの静かな空間で、あえて何も話さず、光の動きだけを親子で観察してみてください。