← 戻る ザ・ナハテラス(The Naha Terrace)

誰のせいか分からないけど、全部正解だった

ぬるい風が首筋にまとわりつく。空港の自動ドアが開いた瞬間、僕らは誰が一番先に「暑い」と口にするか、密かに賭けをしていた。結果、飛行機を降りる前から全員が確信していたのが正解だったらしい。肌にまとわりつく湿った空気の重みが、ここが沖縄であることを、どんな案内板よりも雄弁に教えてくれた。



口の中で弾けるサーターアンダギーの、じゅわっとした油っぽさと、後から追いかけてくる甘い砂糖の粒子。指先に付いた白い粉を、お互いに笑いながら拭い合う。揚げたての熱さと、潮風に混じる甘い香りが、旅の始まりを告げるファンファーレのように心地よかった。


「クラブツインって、要は贅沢に隣で寝ろってことでしょ」と誰かがニヤリと笑った。ザ・ナハテラスの洗練された空間に、僕らのくだらない言い争いが反響して、心地いい騒がしさが広がる。上質なインテリアに似合わない、低俗で愛おしい会話だけが、部屋の隅々にまで積み重なっていく。


おもろまち駅まで歩くわずか5分間。コンクリートを叩くスニーカーの乾いた音が、不規則なリズムを刻む。誰かが自信満々に道を間違え、それを全力で嘲笑う。地図の青い点に従うよりも、路地裏から漂う出汁の匂いや、名もなき花の香りに身を任せる方が、僕らにはずっと合っていた。


窓の外に広がる那覇の夜景。宝石をぶちまけたような光の粒が、深い紺色の空にゆっくりと溶けていく。言葉にしなくても伝わる、心地よい疲労感が、肩のあたりにずっしりと乗っていた。都会の喧騒を遥か下に見下ろす高さで、僕らはただ、静寂という名の贅沢に浸っていた。


裸足で踏みしめたフローリングの、ひんやりとした温度。パリッと張り詰めたシーツの質感が、一日中歩き回った足の疲れを、静かに、丁寧に受け止めてくれる。清潔なリネンの香りに包まれながら、意識がゆっくりと深い海の底へ沈んでいくような感覚があった。


クラブラウンジで、わざと背筋を伸ばして優雅なティータイムを過ごそうと試みた。けれど、結局は誰かがお菓子の盛り合わせを独占しようとして、いつもの騒々しい空気に戻る。ティーカップから立ち上る温かな湯気と共に、大人なふりをすることの難しさを、苦笑いしながら味わった。


スーツケースのジッパーを閉める時の、あの少しだけ抵抗がある、ぎりぎりの感覚。戻らなきゃいけないけれど、まだこの街の湿った気配を、肺の奥まで深く残しておきたいと思った。僕らを強く繋いでいたのは、豪華な設備ではなく、共有したくだらない時間という名の宝物だったのかもしれない。

靴の裏に、少しだけ那覇の白い砂が残っていた。

  • クラブラウンジのティータイムに、全力で「大人なふり」をしてみるのがおすすめ。
  • おもろまち駅までの道中、あえて地図を捨てて迷子になる贅沢を味わってほしい。