← 戻る HOTEL SANSUI NAHA 波之上の湯

肩に触れた濡れたタオルの、重さと温かさ

肩に触れた濡れたタオルの、重さと温かさ

足の裏に触れるタイルのひんやりとした冷たさに、意識がゆっくりと覚醒していく。まだ外は薄暗い午前七時。カーテンの隙間から差し込む淡い光が、部屋の中の埃を小さく躍らせている。隣では上の子がパジャマのボタンを掛け違えたまま、もどかしそうに格闘しており、下の子はなぜか靴下を片方だけ履いた状態で、ぼーっと窓の外の那覇の街並みを眺めていた。家族旅行というのは、いつもこういう、どこか噛み合わない音の重なりから始まる。誰かが探し物をし、誰かが不満を漏らし、誰かが笑う。けれど、その不協和音こそが、私にとっては世界で一番安心するリズムなのだと感じる。心地よい緊張感と弛緩が同居する、私たち家族だけの特別な朝が、ここから始まっていた。

冬の那覇に、あえて家族で身を置いたのはなぜだったか

それはきっと、一月の那覇が持つ、絶妙な温度感に惹かれたからだと思う。冬でありながら、肌を撫でる風にはかすかに南国の湿り気が混じり、どこか懐かしい潮の香りが漂っている。HOTEL SANSUI NAHA 波之上の湯 / HOTEL SANSUI NAHAに身を寄せ、心地よい開放感に包まれながら、私たちは日常のしがらみを脱ぎ捨てた。ホテルを出て三分ほど歩けば、波上宮がある。初詣に向かう道すがら、子供たちが私の手をぎゅっと強く握りしめる。その小さな手のひらの熱さと、冬の朝の張り詰めた冷たい空気のコントラストが、胸の奥をじんわりと温めてくれた。砂利を踏むザクザクという乾いた音、漂ってくるお香の静謐な匂い、そして遠くで絶えず聞こえる波の調べ。家族全員で歩調を合わせようとして、結局はバラバラに歩き出す。けれど、ふと振り返ると、みんな同じ方向を向いて歩いている。その光景に、言葉にできない深い安心感を覚えた。完璧なスケジュールなんて、最初から必要なかったのだ。ただ、この澄んだ空気の中で、お互いの体温を確認し合える距離にいたこと。それこそが、今回の旅で得たかった一番の贅沢だったのかもしれない。

子供たちの瞳に、どんな景色が焼き付いたのだろうか

屋上のスカイプールに足を踏み入れた瞬間、下の子が「海の中にプールがある!」と歓声を上げた。見上げれば突き抜けるような空の青と、プールの深い瑠璃色が溶け合い、どこまでが水でどこからが景色なのか分からない境界線が広がっている。水面に触れた指先から伝わる、ひんやりとしていながらもどこか柔らかい感触。子供たちは、大人が気にするマナーや静寂なんてとうに忘れ、白い水しぶきを上げて無邪気に笑っていた。その笑い声が、高い空へと吸い込まれていく。私はプールサイドの椅子に深く腰掛け、濡れた白い綿のタオルを肩に掛けた。ずっしりとした湿った重みが、心地よく肩に食い込む。ふと見ると、上の子が真剣な表情で、水面に浮かぶ小さな気泡を追いかけていた。「見て、お魚みたいだよ」と呟くその横顔に、かつての自分を重ねる。大人になると、そんな些細なことに時間を忘れて没頭できなくなるけれど、子供の目を通せば、ただの水溜まりさえも大冒険の舞台になる。そんな純粋な視点を分けてもらった心地がして、視界が少しだけ潤んだ。風が吹くたびに、濡れた髪から冷たい雫が滴るけれど、その不便ささえも、今は愛おしい記憶の断片となっている。

旅の終わり、心に深く沈殿しているのはどの記憶か

それは、朝食バイキングで味わったポークたまごの、あの濃いめの味かもしれない。じゅわっと溢れる卵の鮮やかな黄色と、塩気の効いたお肉の組み合わせ。口いっぱいに広がる濃厚な味わいが、眠っていた身体をゆっくりと呼び起こしてくれる。子供たちが、海ぶどうのプチプチとした不思議な食感に驚いて顔を見合わせていた、あの微笑ましい瞬間。そして、チェックアウト前のひととき、露天風呂付の和洋室にある幅二百二十センチものキングサイズベッドに、家族全員で無理やり潜り込んだ時間。誰が誰の足を踏んでいるのかも分からないけれど、狭い空間に凝縮された家族の体温と、洗い立てのリネンの清潔な香りが、心地よい繭のように私たちを包み込んでいた。広い部屋であることよりも、その広いベッドの中で、あえて寄り添い合っていたあの数分間の方が、ずっと贅沢に感じられた。不器用で、騒々しくて、けれど誰一人欠けてはいけない。そんな私たちのチームの形を、この場所が優しく肯定してくれたような気がしてならない。

窓の外で、波が静かに砂浜を洗う音が聞こえる。

  • 波上宮への散歩は、早朝の空気が澄んでいる時間帯がおすすめ。子供の手を繋いで、ゆっくりと歩いてみてください。
  • 屋上プールの後は、そのままジャグジーへ。温かいお湯に身を任せて、那覇の街並みをぼーっと眺める時間が最高に贅沢です。