← 戻る 草津ナウリゾートホテル

月が少しだけ欠けていて、誰のせいか言い合っていた夜

5年後の私たちへ。肌にまとわりつく9月の湿った空気と、車内で繰り広げられた救いようのない騒がしさを覚えているかな。細かいことは忘れても、心地よい疲労感と、森の静寂に包まれて呼吸が深くなったあの感覚だけは、身体のどこかに深く刻まれているはず。

5年後の記憶に深く刻まれているはずの、4つの断片

バレルサウナに満ちる杉の香りと、肌を刺す冷水の衝撃
狭い木の樽の中で、濃密な熱気に包まれて思考がゆっくりと溶けていく感覚。サウナストーンに水が弾ける「ジュッ」という鋭い音と、その後の水風呂に飛び込んだ瞬間の、肺まで凍りつくような衝撃。標高1,200メートルの冷涼な風に吹かれながら、「誰が一番長く耐えられるか」と賭けたけれど、結局一番先に意識を飛ばして寝ていたのは、一番強気だったあいつだった。あの情けない寝顔は、きっと一生忘れない。

ビュッフェの皿に盛られた、群馬の秋を彩る鮮やかな色彩
地元の旬の野菜たちが、お皿が物理的に重くなるまで盛り付けられ、口の中で弾ける大地の味に歓喜した時間。カチャカチャと鳴る皿の音に混じって、「誰の皿が一番カオスか」という不毛な議論で笑い転げ、飲み物を吹き出しそうになったあの瞬間こそが、実はこの旅で最も贅沢な調味料だったのかもしれない。お互いの皿を見て呆れながらも、同じものを欲しがる。そんな言葉にならない同期が、たまらなく心地よかった。

白根神社へ向かう道、足首をかすめるススキの乾いた囁き
歩くたびにカサカサと乾いた音を立てるススキの感触。遠くから聞こえてくるお祭りの太鼓の音が、自分の心拍数と重なり、心地よく加速していく感覚。9月の夜風が少しだけ冷たくなって、自然と誰かの肩が触れ合ったとき、「来てよかったね」とわざわざ口に出さなくても、みんなが同じことを考えていた。灯籠の淡い光に照らされた夜の空気の中で、歩く速度が自然とゆっくりになっていった。

和洋室の絨毯に転がった、脱ぎ捨てられた靴下と深夜の残響
ベッドと布団が混在する、あの不思議な境界線。誰がどこで寝るかで揉め、最終的に適当に場所を決めて、狭い空間に身を寄せ合った夜。オレンジ色の間接照明に照らされた絨毯の少し硬い感触と、深夜まで止まらなかったくだらない会話の残響。草津ナウリゾートホテルのあの部屋は、私たちのわがままや不器用な関係性をすべて優しく飲み込んでくれる、ちょうどいい大きさの器だった。

5年後、この記憶の封印を解いたとき

たぶん、料理の正確な名前や部屋番号は忘れているだろう。でも、バルコニーから見上げた、少しだけ欠けた月の青白い光と、森の深い静寂が私たちの騒がしさを包み込んでいた感覚だけは、鮮明に思い出せる気がする。それは人生のどこかで、冷たい風が頬をかすめたときに呼び起こされる記憶になる。完璧なプランなんてなくてよかった。迷い込んだ道や予定外の寝坊があったからこそ、この旅は私たちの形になったのだと思う。また同じように、くだらないことで笑い合いたい。

湯気の中に消えていった、私たちのくだらない笑い声。

  • バレルサウナ後の外気浴では、標高1,200メートルの澄んだ風を全身で味わって。
  • ビュッフェでは正解のない盛り付けに挑戦し、誰の皿が一番個性的か競い合ってほしい。