← 戻る 相鉄グランドフレッサ 熊本

月が明るすぎたから、カーテンを閉めた

月が明るすぎたから、カーテンを閉めた

路面電車のレールが擦れる、耳をつんざくような高い金属音。誰が一番先にホテルを見つけられるかという、くだらない賭けを始めたけれど、結果的に全員で同じ方向を間違えて歩いた。湿り気を帯びた九月の風が頬を撫でる中、相鉄グランドフレッサ 熊本の入り口に辿り着いたとき、誰一人として勝ち誇った顔をしていなかった。それは、僕たちのチームワークが完璧に機能して、全員で同じ間違いを犯したという、奇妙な連帯感だった。



街角の店で買った、少し不格好な地元の菓子。指先に残る砂糖のざらついた感触と、口の中でじわりと溶け出す濃厚な甘い温度。それを冷たいお茶で流し込むと、喉の奥に秋の気配が静かに混じった気がした。甘美な倦怠感が心地よく身体を包み込み、旅の速度がゆっくりと、贅沢に落ちていく。


「このスマートTV、僕らよりよっぽど賢いんじゃない?」誰かが呆れたように呟き、部屋に笑い声が弾けた。青白い画面にログインパスワードを三回間違えた後の、あの絶妙に気まずい沈黙。結局、誰が操作しても同じ結果になるという結論に達したとき、僕たちは自分たちの不器用さを、まるで勲章のように誇らしく思った。


誰が一番荷物を多く持ってきたかという、どうでもいい選手権。クローゼットに無理やり詰め込んだスーツケースが、呼吸をするみたいに盛り上がっている。ジッパーが悲鳴を上げるまで押し込み、なんとか閉じたときの、あの小さな達成感。そんな無意味な時間こそが、旅の記憶に一番深く刻まれる。


キャッスルビュールームの窓の外に広がる、熊本城の重厚なシルエット。夜風はまだ少しだけ湿り気を帯びていて、肌にまとわりつく。遠くで揺れるススキの穂が、街の明かりに照らされて銀色の波のように見えた。あの静寂は、都会の喧騒とは違う、心地よい重みを持って僕たちの心に沈殿していく。


サータ製ベッドの、身体を深く包み込むような沈み込み。裸足で踏んだタイルのひんやりした感覚から、布団の中のぬくもりへ移動するあの数秒間の快楽。深夜三時にトイレまで歩く距離が、なんだか果てしなく遠く、暗闇の中を歩く小さな冒険のように感じられた。


予定になかった秋祭りの囃子が、遠くから風に乗って聞こえてきた。誘い合うように外へ出ると、そこには見たこともない鮮やかな色の提灯が連なり、夜道を橙色に染めていた。地図を閉じて、ただ音の方向に歩くという贅沢。迷うことが目的になると、見慣れたはずの景色が急に色彩を増して鮮やかになる。


部屋に戻って、誰が一番先に寝落ちするかという静かな競争。心地よい疲労感が、身体の輪郭をゆっくりとぼやかしていく。明日もまた、適当に迷おうと決めた。僕たちは、正解のない道を歩くことだけは、世界で一番得意だから。

最後に見た月が、驚くほど白く、澄んでいた。

  • 辛島町からホテルまで、あえて地図を見ずに迷いながら歩いてみて。
  • キャッスルビュールームで、夜中の城を眺めながらぼーっとするのが正解。