← 戻る ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド

曇った窓の向こうで、街の灯りが滲んでいた

曇った窓の向こうで、街の灯りが滲んでいた

12月の神戸。耳の端を鋭く削るような冷たい風が吹き抜け、吐き出す息が白く濁る。地図アプリが指し示す方向と、目の前の景色がどうしても一致しない。「誰が一番に迷子になるか」という賭けの結果、全員が敗北した。凍えた指先でスマホの画面を何度も叩きながら、誰も正解に辿り着けなかったことに、同時に吹き出した。



朝8時の静寂。ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランドの朝食で、焼きたてのパンから漂う濃厚なバターの香りが鼻をくすぐる。口の中でゆっくりと溶けていく温度が心地よく、昨夜のくだらない言い争いさえ、遠い記憶のように溶けていった。コーヒーの白い湯気の向こう側で、眠そうな顔をした友人が、ぼーっと淡い青色の海を眺めていた。


「充電器、誰が持ってるの?」という絶望的な問いが、部屋に響く。全員が顔を見合わせ、同時に「お前だろ」と指を差した。あの瞬間の静寂は、ある種の芸術だったかもしれない。結局、誰一人として持っていなかった。コンセントを巡る熾烈な争奪戦が始まり、誰が先に充電できるかで再び賭けをすることになった。私たちの旅は、いつもこういう不毛な方向へ転がっていく。


ハーバーランドの埠頭で、わざと変なポーズで写真を撮り合った。後で見返して「正気か?」と激しくツッコミを入れ合ったあの時間。誰にも見せられない、私たちだけの秘密のアーカイブが増えていく。それは、冷たい空気の中でゆっくりと結晶化していく霜の花のように、不格好だけれど、私たちにとってはかけがえのない形をしていた。


遠くに見えるルミナリエの光。それは夜の底に、誰かがこぼした宝石の破片みたいだった。隣にいる友人の肩が小さく震えているのに気づいて、言葉もなく寄り添った。温かい飲み物を分け合いながら、ただ光の粒子が冬の空気に溶けていくのを眺めていた。何かを語るよりも、同じ温度の風に吹かれていることの方が、ずっと誠実な会話に感じられた。


スイートの部屋で、ジャグジーの泡が弾ける小さな、けれど絶え間ない音が心地よい。肌に触れるお湯の温度がちょうどよく、張り詰めていた思考がゆっくりとほどけていく。重厚なカーテンを引いたとき、指先に触れたベルベットの深い質感。そこにある静けさは、外の世界の喧騒を丁寧に遮断してくれていた。ベッドから窓まで、裸足で歩いたタイルのひんやりとした感触が、心地よく意識を覚醒させる。


予定外の路地に入り込んで、小さな雑貨店を見つけた。店主のぶっきらぼうな口調が、冬の冷たさの中でなんだか温かく感じられて。計画通りにいかない旅こそが、本当の旅なのだと、誰かが呟いた。結局、私たちは目的地に辿り着くことよりも、その途中で見つけた「意味のないもの」に心を奪われるタイプなのだと、改めて気づかされた。


深夜3時の静寂。窓の外に広がる神戸の夜景が、深い青色のインクをこぼしたように広がっている。足りないものばかり探して生きてきたけれど、今ここにあるこの静けさと、隣でいびきをかいて眠る友人の存在だけで、十分だったのかもしれない。欠けている部分があるからこそ、そこに誰かが入り込む余地がある。そんな気がした。

最後に見た夜空には、小さな星が一つだけ、震えていた。

  • ラウンジの絶景を前に、誰が一番くだらないことを言うか競い合ってみて。
  • 朝食のクロワッサンを、世界で一番贅沢な気分で頬張ってほしい。