← 戻る ドーミーイン神戸元町

濡れたタオルの重みと、深夜二時の笑い声

濡れたタオルの重みと、深夜二時の笑い声

肉まんを巡る、賑やかな口論

「ねえ、正気? さっき南京町で三つも食べたよね」
「だって、これは限定の味だったんだもん! 食べるタイミングってものがあるの」
「タイミングって何。胃袋の容量という概念を完全に無視してない?」
「いいじゃん、旅なんだから! ねえ、君もそう思うでしょ」
「私は思うけど、後で『もう一歩も歩けない』って泣きつかないでよ」

もっくもくと立ち上る肉まんの白い湯気と、鼻腔をくすぐる濃厚な香りに包まれながら、私たちは互いに呆れ合っていた。誰かが吹き出すとそれが連鎖し、元町の冷たい秋風さえも心地よいスパイスに変わる。そんな、どうでもいい言い争いこそが旅のメインディッシュなのだという気がして、私たちは笑いながら街を歩いた。

喧騒を脱ぎ捨て、14階の静寂へ

元町駅からホテルまで歩くわずか四分。それは単なる距離ではなく、日常から非日常へと切り替わるスイッチのような時間だった。南京町の朱色の海榮門を通り過ぎる時、点心の香りと11月の湿った冷たい空気が混ざり合い、いま自分が「旅の真っ只中」にいることを静かに告げる。

ドーミーイン神戸元町に足を踏み入れた瞬間、街の喧騒がふっと遠のいた。案内されたデラックスツインの部屋で、シモンズ社製のベッドに身を投げ出す。パリッとしたリネンの清潔な香りと、身体のラインに合わせて深く沈み込む包容力。それは、歩き疲れた足の疲れを吸い取ってくれる、私たちだけの小さなシェルターだった。

けれど、この旅の核心は最上階の「浪漫湯」にある。14階に広がるのは、都会の真ん中であることを忘れさせる静寂だ。天然温泉の熱い湯が、張り詰めていた神経をゆっくりとほどいていく。吹き抜けの露天風呂から見上げる夜空は、高層ビルに囲まれているはずなのに、どこまでも自由で深い。ゆっくりと流れる雲を眺めていると、地球という大きな塊が静かに回転している感覚に陥った。

サウナでの体験は、心地よい時間的なラグだった。じりじりと肌を焼くようなドライサウナの熱さに耐え、心拍数が上がっていく。そこから水風呂へ飛び込んだ瞬間、冷たい水が針のように皮膚を突き刺し、思考が真っ白になる。熱から冷へ、そして再び湯船へ。その激しい温度の往復の中で、昼間のくだらない会話が心地よい残響のように脳裏に浮かぶ。水風呂の突き刺さるような冷たさが、かえって体の中に眠っていた静かな熱を呼び覚ます。それは、ぶつかり合いながらも最後には心地よい温度に落ち着く、私たちというグループの絶妙な距離感に似ていた。

浴衣の袖に隠した、本音の時間

「……本当は、来るの迷ったんだよね」
「え、なんで。あんなに乗り気だったじゃん」
「なんか、タイミング的に余裕ないなって思って。でも、来てよかった」
「まあね。肉まん買いすぎたところ以外は、完璧なプランだったと思うよ」
「ふふっ、それだけは認めないけど」

浴衣に着替え、冷たい飲み物を片手に、部屋の明かりを少しだけ落として座る。昼間の賑やかさが嘘のように、声のトーンが一段低くなる。誰が誰を揶揄するでもなく、ただそこに一緒にいることの安心感だけが、部屋の隅々まで満ちていた。正解なんてない旅だけど、このタイミングでこのメンバーで集まったことは、きっと間違っていなかった。そんな確信が、静かに胸の中に降り積もっていく。

窓の外では、神戸の街の灯りが濡れた路面に反射し、淡く揺れていた。

  • 夜食に無料で提供される「夜鳴きそば」を、あえて深夜2時にみんなで啜る贅沢を。
  • 浪漫湯の露天風呂で、あえて何も話さずに、夜空を流れる雲の速度を競い合ってみて。